home > よくある眼科疾患の解説 > 眼筋麻痺(複視)
眼を動かす眼の周りの筋肉には内直筋・外直筋・上直筋・下直筋・上斜筋・下斜筋と6つの筋肉があります。その6つの筋肉の動きが悪くなると、物がダブって見える、複視が生じます。
内直筋・上直筋・下直筋・下斜筋・上眼瞼挙筋・瞳孔括約筋を動かす神経を動眼神経といいます。動眼神経がなんらかの原因で麻痺し、動かなくなる状態を動眼神経麻痺と言います。それぞれの筋肉の働きは、
内直筋:眼を内側に動かす
上直筋:眼を上方に動かす
下直筋:眼を下方に動かす
下斜筋:眼を上方斜めに動かす
上眼瞼挙筋:瞼を上げる
瞳孔括約筋:瞳孔を縮める
眼が外斜視になり複視を訴えます。外転以外の全方向への運動制限が見られます。上眼瞼挙筋が侵されると眼瞼下垂、瞳孔括約筋が侵されると散瞳が見られます。
左動眼神経麻痺
右眼瞼神経麻痺
右の眼が下がり瞳も開いている
脳動脈瘤・脳腫瘍・脳梗塞・頭蓋内亢進などの脳内病変が疑われるので、早急に頭部のMRIや、MRA検査が必要です。外傷や糖尿病によって起こることもあります。
原因疾患が見つかった場合、脳外科や神経内科で治療を受けます。
眼科では症状の変動がなくなれば、複視の軽減のために、プリズム眼鏡を処方することがあります。発症して3か月から6か月たっても斜視や眼瞼下垂が残る場合は手術を行うこともあります。
眼を外に動かす筋肉を外直筋と言います。外転神経がなんらかの原因で麻痺し、外直筋が動かなくなる状態を外転神経麻痺と言います。
眼を外側に動かす事が出来なくなります。内斜視になり、物がだぶって見えます。
右外転神経麻痺
動眼神経麻痺と同様に、脳梗塞・脳出血などの頭蓋内病変,外傷、糖尿病で起こることがあり、頭部の精査や全身の精査が必要です。
動眼神経麻痺と同様に原因疾患の治療を脳外科や神経内科で行います。
眼窩では症状の変動がなくなれば、複視の軽減のためにプリズム眼鏡を処方することがあります。3月から6か月たっても斜視が残る場合は斜視手術を行うことがあります。
眼を斜め下方に動かす筋肉を上斜筋と言います。滑車神経がなんらか原因で麻痺し、上斜筋が動かなくなる状態を滑車神経麻痺と言います。
眼を内下方に動かす事が出来なくなり、複視を訴えます。見やすい位置でものを見ようとするためにあごを上げて物を見たり、首を曲げて物を見る癖が出る方もいます。
左滑車神経麻痺の眼の動き
最も多いのは先天性です。動眼神経麻痺や外転神経麻痺と同様、頭蓋内の疾患や糖尿病・外傷でおこることもあり、精査が必要です。
先天性の場合、斜視が目立つ時や首を曲げる癖が目立つ時は斜視手術を行います。
後天性の場合、原因疾患の治療を脳外科や神経内科で行います。
症状の変化がなくなれば、複視の軽減のためにプリズム眼鏡を処方することがあります。3か月から6か月たっても治らなければ、手術を行うこともあります。
プリズム眼鏡とは、度の入ったレンズのプリズムを組み込み、光を屈折させることによって像を移動させることのできるレンズです。斜視自体をなおすことはできませんが、斜視の角度を減らし、両方の目を使いやすくします。
プリズム眼鏡
眼鏡の上に貼り付けて、プリズムの効果が得られる膜状のものです。プリズムと同じ効果が見られます。薄く簡単に張り付けられ、取り外しも簡単です。厚みが均等で薄いので、強いプリズム効果の欲しい人にも向いています。眼鏡のレンズに線が見えるのが欠点です。
眼鏡のレンズに合わせて切り取り、張る
眼の筋肉の位置を動かすことによって、複視を減らします。
斜視の手術