
白内障は加齢と深く関係しており、80歳以上ではほとんどの方に見られる身近な病気です。
一方で、「高齢だから仕方がない」「手術するには年を取りすぎている」と考え、受診や治療をためらう方もいます。
しかし、白内障による見えにくさは、読書や外出などの日常生活だけでなく、転倒や自動車運転などにも影響する可能性があります。
この記事では、高齢の方の白内障の割合や症状、放置した場合に考えられるリスク、高齢になってからの治療・手術についてわかりやすく解説します。
高齢者に多い白内障とは

白内障とは、水晶体(目の中でレンズの役割を担う器官)が濁り、かすみ・ぼやけ・まぶしさといった症状が起こる病気です。
水晶体が透明な状態では光を網膜まで通すことができますが、濁りが生じると光が散乱し、さまざまな症状が起こります。
白内障で一番多いのは加齢に伴う「加齢性白内障(老人性白内障)」ですが、そのほかにも糖尿病やアトピー性皮膚炎、目の外傷、ステロイド薬などが発症や進行に関係しています。
白内障は加齢とともに増える
白内障は高齢になってから突然発症するわけではなく、年齢を重ねるにつれて水晶体の濁りが徐々に強くなっていきます。
しかし、水晶体に濁りが生じても、すぐに見えにくくなるわけではありません。
軽度の段階では自覚症状がなく、本人が気づかないまま進行しているケースもあります。
▶白内障は何歳から発症する?若年での発症ケースや手術を受ける年齢について紹介
▶白内障の原因は加齢だけじゃない?予防方法や手術について紹介
60代・70代・80代で白内障になる割合
白内障は、年齢が上がるにつれて有病率が大幅に増加します。
厚生科学研究班による調査では、初期の水晶体混濁を含めた有所見率は60歳代で66~83%、70歳代で84~97%とされ、さらに80歳以上では100%と、ほぼすべての方に白内障がみられるようになります。
高齢者の白内障の症状
加齢性白内障は年単位の時間をかけてゆっくり進むことが多く、「老眼が進んだ」「歳のせいで見えにくくなった」と、白内障であることに気づかないこともあります。
白内障の代表的な症状は以下のとおりです。
- 視界全体がかすんで見える
- 明るい場所や車のライトをまぶしく感じる
- 物が二重・三重に見える
- 暗い場所で見えにくい
- 色が以前とは違って見える
- 眼鏡の度数を合わせても十分に見えない
- 視力が低下する
水晶体の濁りが広範囲になるにつれて、症状も強くなります。
片方の目だけでは変化に気づきにくいこともあるため、以前より見え方が変わったと感じた場合は眼科で検査を受けましょう。
高齢者にとっての白内障のリスク

白内障によって見えにくい状態が続くと、外出や趣味を控えるようになったり、段差や人・車を認識しづらくなったりするなど、さまざまな悪影響が考えられます。
ここでは、高齢の方にとっての白内障がどのような影響を及ぼすかを解説します。
生活の質(QOL)の低下につながる
白内障が進むと、視力だけでなく、明暗を見分ける力や動いているものを見る力なども低下し、日常生活で不自由を感じる場面が増えていきます。
読書やテレビ、家事、仕事、趣味など、これまで当たり前に行っていたことを避けるようになる可能性もあるでしょう。
白内障は徐々に進むため、本人が見えにくい状態に慣れて生活への影響を自覚していないこともあり、ご家族が気づいた場合は適切な治療につなげることが大切です。
転倒リスクが高まる
高齢の方にとって特に注意したいのが、転倒です。
白内障が進むと明暗の差を捉える力なども低下するため、階段や道路の小さな段差、足元の障害物を認識しにくくなり、転倒リスクが高まります。
日本白内障学会は、両眼に白内障がある場合、白内障のない人と比べて転倒リスクが1.8倍になるとの海外報告を紹介しています。
高齢になると筋力やバランス感覚の低下も起こり、転びやすくなるため注意が必要です。
(参考:日本白内障学会『白内障とQOL』)
交通事故のリスクが高まる
車を運転する高齢の方にとって、白内障は見過ごせない問題です。
日本白内障学会は、白内障のある人はない人に比べて、交通事故のリスクが約2.5倍になるという報告を紹介しています。
また、同じく日本白内障学会が紹介するアンケート(白内障の手術を受ける直前の患者さんが対象)では、見えにくさを理由に運転をやめた人は全体の約4%、運転が難しいと感じていた人も約3%にとどまっていたといいます。
これはつまり、多くの人が見えにくさに気づかないまま運転を続けていた可能性があるということです。
(参考:日本白内障学会『白内障とQOL』)
認知症のリスクが高まる
白内障は、認知症のリスクにも影響する可能性があります。
2023年の解析では、約80万人を対象とした研究を統合した結果、白内障がある人では、ない人と比べて認知症を発症するリスクが高い傾向が報告されました。
白内障によって目から入る情報が減ることで脳への刺激が少なくなり、脳の働きに影響するのではないかと考えられています。
(参考:Zhenrong Xiong, Xinming Li, Dejiang Yang, Chongyu Xiong, Qinggang Xu, Qi Zhou『The association between cataract and incidence of cognitive impairment in older adults: A systematic review and meta-analysis』)
放置すると症状が進行し手術難易度も上がる
白内障が進行して水晶体が硬くなると、手術の難易度が上がって手術時間も長くなる傾向があり、目の組織への負担が大きくなります。
白内障は自然に治ることはなく、一度濁った水晶体を薬で元に戻すこともできません。
先延ばしにせず、定期的に眼科で目の状態を確認しましょう。
高齢者の白内障の治療法
白内障の治療には、主に点眼治療と手術の2つの方法があります。
治療法については、年齢ではなく、生活への影響や目の状態、全身の健康状態などを踏まえて判断します。
なお、点眼治療はあくまで進行を遅らせるためのもので、進行した場合は手術が必要になります。
高齢者でも白内障手術は受けられる?

白内障手術は年齢だけで受けられるかどうかが決まるものではなく、高齢の方でも手術自体は可能です。
ただし、目や体の状態によっては、手術が難しかったり慎重な判断が求められたりする場合もあります。
ここからは、手術を受けられるケースと難しいケースを紹介します。
高齢でも手術自体は可能
白内障手術には「何歳まで」という年齢制限はなく、100歳を超えて手術を受ける方もいます。
手術の可否を決めるのは年齢ではなく、目の状態や全身の健康状態、手術中の姿勢を保てるか、術後の点眼や通院を続けられるかといった点です。
実際に手術を受けられるかは、診察や検査のうえで医師が判断するため、「80代だから遅い」「90代だから手術できない」と年齢だけで決めつけず、まずは眼科で相談してみましょう。
手術が難しい・慎重な判断が必要なケースもある
手術が難しいと判断されることがあるのは、主に以下のようなケースです。
| 手術が難しいケース | 理由 |
|---|---|
| 白内障がかなり進行している | 水晶体が非常に硬くなるなど、白内障の状態によっては手術難易度や合併症リスクが上がるため慎重な判断が必要になる |
| じっとしていることが難しい | 局所麻酔による手術では頭や体を動かさずにいる必要があるため、認知症などで安静を保てない場合は手術できないことがある |
| 仰向けの姿勢を取り続けられない | 白内障手術は基本的に仰向けで行うため、呼吸器疾患や脊椎の病気などで必要な姿勢を維持できない場合は手術が難しいことがある |
| 術後管理ができない | 術後は点眼や定期的な診察が必要なため、本人による管理が難しく、家族などのサポートも得られない場合は手術が難しくなることがある |
| 全身状態が手術に適さない | 重い全身疾患がある、病状が安定していないなど、安全に手術できないと判断された場合は、手術を行えないことがある |
| 手術による視力改善が期待できない | 他の目の病気の影響などにより、白内障手術をしても視機能の改善がほとんど期待できない場合は、手術を推奨しないことがある |
なお、全身の状態を先に整える、手術の方法や環境を変えるなど、患者さんごとに対応を検討することで手術が可能となる場合もあります。
手術の際に受けられる対応やサポートについて、眼科で相談してみましょう。
高齢者が白内障手術を受ける際の注意点

白内障手術は高齢になってからでも受けられますが、体の状態や生活環境によっては、若い方とは異なる配慮が必要になることがあります。
ここでは、高齢の方が白内障手術を受ける際の注意点を紹介します。
日帰りではなく入院になることがある
現在、白内障手術の多くは日帰りで行われていますが、高齢の方や糖尿病など管理が必要な病気がある方は、入院設備のある医療機関での手術が勧められることがあります。
持病や身体面で不安がある場合には、診察で医師に伝えておきましょう。
感染症などの術後合併症に注意する
白内障手術後、まれではあるものの、眼内炎などの感染症が起こることがあります。
年を重ねると免疫力が低下するため、感染症には十分注意が必要です。
処方された目薬を指示どおりに使い、目をこすらないようにして目を清潔な状態に保ちましょう。
家族や周囲のサポートが大切になる
高齢の方の白内障手術では、ご家族や周囲の方の支えが大切になります。
例えば、白内障手術当日はご本人が車を運転して帰ることができないため、送迎や付き添いの手配が必要です。
また、術後は目薬の種類や回数、通院日の管理を手伝ったり、目をこすっていないか見守ったりといったサポートも必要です。
どのようなサポートが必要になるか、前もって医師に確認しておき、家族で話し合っておくと安心です。
高齢者の白内障についてのよくある質問
ここでは、高齢者の白内障についてのよくある質問を紹介します。
Q:高齢者の白内障は必ず手術が必要ですか?
A:見え方に大きな不自由がなければ、定期的な検査や点眼治療で経過をみることもあります。
白内障手術を受けるタイミングは一般的には「ご自身が見えにくさや日常生活で不自由を感じたとき」とされることが多いですが、高齢の方の場合、先延ばしにすると持病や体調による心配もあります。
手術が必要か、いつ受けるべきかは、持病や内服中の薬なども伝えたうえで医師と相談しましょう。
Q:高齢者の白内障手術は何歳まで受けられますか?
A:白内障手術には、年齢による一律の上限はありません。
目の状態や全身の健康状態、手術中の姿勢を保てるか、術後の点眼や通院を続けられるかといった点を考慮して判断します。
Q:高齢者の白内障は手術しなくても大丈夫ですか?
A:白内障による見えにくさが軽く、日常生活に支障がなければ、すぐに手術をせず経過をみることもあります。
手術をしたほうがいいか、点眼治療や経過観察のほうがいいかは、一人ひとり異なるため、まずは眼科での相談をおすすめします。
まとめ
白内障は加齢とともに増え、高齢の方にとっては身近な目の病気です。
白内障による視機能の低下は、日常生活だけでなく転倒リスクにも影響するため、見えにくさによって生活に不自由を感じるようになったら、手術を検討するひとつのタイミングです。
白内障手術に一律の年齢上限はなく、目や全身の状態を確認したうえで、高齢の方でも手術を検討できます。
東武練馬駅南口から徒歩1分のつつみ眼科クリニックでは、患者様の希望やライフスタイルを伺いながら、一人ひとりに適した白内障手術の時期を一緒に検討しています。
「80代・90代でも手術できる?」「まだ手術しなくても大丈夫?」など気になることがある方は、まずは一度ご相談ください。