
近視(特に強度近視)は緑内障の危険因子の一つで、国内の大規模な研究でもリスクの上昇が報告されています。
また、近視は緑内障だけでなくさまざまな目の病気のリスクを高めるため、注意が必要です。
この記事では、近視と緑内障の関係や、強度近視でリスクが高まる理由、緑内障以外の合併症などについて詳しく解説します。
緑内障は自覚症状だけでは気づきにくい病気だからこそ、正しい知識を持ち、必要に応じて検査を受けることが大切です。
近視だと緑内障になりやすい?

近視のある人は、近視のない人に比べて緑内障を発症しやすいことがさまざまな研究で示されています。
近視だからといって必ず緑内障になるわけではありませんが、初期は自覚症状がほぼないため、日頃から目の健康に気を配ることが大切です。
緑内障とは
緑内障は、目から入った情報を脳へ伝える視神経が少しずつ傷み、見える範囲(視野)が欠けていく病気です。
初期は欠ける範囲が小さく、さらに両目で見ているともう片方の目が見えにくい部分を補うため、異変に気付きにくい傾向にあります。
緑内障で一度失われた視野や傷ついた視神経を元に戻すことは現代の医学ではできないため、進行させないことがとても大切です。
近視とは
近視とは、目に入った光が網膜より手前でピントを結んでしまい、遠くがぼやけて見える状態です。
日本近視学会では、近視の程度を以下のように分類しています。
| 分類 | 度数 |
|---|---|
| 弱度近視 | -0.5D以上~-3.0D未満 |
| 中等度近視 | -3.0D以上~-6.0D未満 |
| 強度近視 | -6.0D以上 |
また、近視は状態によって「単純近視」と「病的近視」に分けられます。
単純近視は、眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を矯正でき、近視以外に大きな病的変化がみられないものを指します。
一方、病的近視は、眼球後部の変形などに伴って網膜や脈絡膜などに病的な変化が生じ、矯正しても正常な視力が出ない状態です。
強度近視のすべてが病的近視になるわけではありませんが、強度近視では病的近視のリスクが高くなります。
近視と緑内障の関係

ここからは、近視と緑内障の関係について、5つのポイントに分けて詳しく解説します。
近視が強いほど緑内障のリスクが高くなる
近視が強くなるほど目の奥の構造的な変化も大きくなり、緑内障のリスク上昇につながると考えられています。
40歳以上の約1,420万人を約7.5年追跡した国内の調査でも、強度近視の人は近視のない人と比較して、緑内障の発症リスクが約2.7倍であることが示されています。
(参考:京都大学『近視、強度近視では緑内障手術を要するリスクが最大約4倍に上昇―1400万人追跡調査で判明―』)
強度近視では緑内障と誤診されるケースがある
強度近視の目では、眼球が伸びる影響で視神経乳頭(視神経の出入口)が変形をしやすくなります。
こうした形の変化は緑内障による変化とよく似ており、近視による変化なのか、緑内障なのかの見極めが難しい傾向にあります。
また、緑内障の発症や進行には眼圧が関係していますが、眼圧が正常範囲内であっても緑内障を発症することがあり、これを「正常眼圧緑内障」といいます。
日本人の緑内障では正常眼圧緑内障が多く、近視の方にみられる緑内障でもこのタイプが多いとされています。
そのため、眼圧が正常だからといって安心せず、定期的に眼科で検査を受けることが大切です。
強度近視では若い年齢で緑内障を発症することがある
強度近視がある場合は20代や30代など若い年代でも緑内障がみられることがあります。
緑内障は40歳を過ぎてから増える病気ですが、近視が強い方など緑内障のリスク要因がある方は、「まだ若いから大丈夫」と考えず、一度早めに緑内障の検査を受けておきましょう。
強度近視では緑内障で視野の中心に障害が起こることがある
一般的な緑内障では、視野の欠けは中心から少し外れた場所で始まり、視野の中心は末期まで比較的保たれることが多い傾向にあります。
しかし、強度近視では、初期から視野の中心に障害が起こることがあります。
視野の中心は文字を読んだり人の顔を見たりする際に影響する重要な部分であるため、日常生活に支障をきたさないためにも早期発見が重要です。
(参考:Yugo Kimuraら『Retinal Nerve Fiber Layer Defects in Highly Myopic Eyes with Early Glaucoma』)
強度近視では緑内障の重症化にも注意が必要
強度近視の人は緑内障を発症しやすいだけでなく、手術が必要になるほど重症化するリスクも高いことがわかっています。
京都大学の研究グループが40歳以上の約1,420万人を約7.5年間追跡したところ、強度近視の人は近視のない人と比べ、緑内障を発症するリスクが約2.7倍、進行した緑内障に行う濾過手術を受けるリスクは約4倍でした。
(参考:京都大学『近視、強度近視では緑内障手術を要するリスクが最大約4倍に上昇―1400万人追跡調査で判明―』)
なぜ?近視で緑内障が増える理由

近視で緑内障が増える背景には、眼球が前後方向に伸びることで、視神経やその周囲の構造に変化が生じることが関係すると考えられています。
また、強度近視では眼軸長が伸びることで目の血流にも変化がみられ、これが関与しているのではないかという説もあります。
強度近視が引き起こす緑内障以外の合併症
強度近視では、目の構造が変化することによって、緑内障以外にも以下のようなさまざまな病気を引き起こすリスクが高くなります。
- 網膜剥離
- 近視性黄斑症
- 近視性牽引黄斑症候群
- 近視性網脈絡膜新生血管
- 網脈絡膜萎縮
進行した場合、失明につながるリスクもあるため、眼科で検査を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。
強度近視以外で緑内障のリスクを高める要因
緑内障が起こる明確な原因ははっきり解明されていないものの、近視以外にもさまざまな要因が影響していると考えられています。
特に緑内障の家族歴がある方や、健康診断などで眼圧・視神経の異常を指摘された方は注意が必要です。
以下で、近視以外で緑内障のなりやすさに影響する要因をまとめました。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 加齢 | 40歳以上で増え、年齢が上がるほど有病率も高くなる |
| 高い眼圧 | 視神経に負担がかかり、緑内障の発症・進行に関係する |
| 家族歴 | 血縁者に緑内障の人がいる場合は注意が必要 |
| 遠視 | 隅角(房水の出口)が狭いことが多く、閉塞隅角緑内障になりやすい |
| 全身の病気 | 糖尿病・高血圧・低血圧、片頭痛、睡眠時無呼吸症候群などと関連がある |
| ステロイド薬 | 使用方法や体質によって眼圧が上昇する場合がある |
近視が強い人はどうやって緑内障を検査で調べる?
緑内障かどうかは、視力や眼圧だけでは判断できません。眼科では、主に以下のような検査を組み合わせて調べます。
強度近視では視神経乳頭に近視特有の変化が生じるため、緑内障かどうかを判断するのが難しい傾向にあり、より慎重に診断を行います。
| 検査 | 詳細 |
|---|---|
| 眼圧検査 | 眼圧を測定する |
| 隅角検査 | 房水の出口である隅角を観察し、緑内障のタイプを調べる |
| 眼底検査 | 視神経乳頭などに緑内障性の変化がないか確認する |
| 視野検査 | 見える範囲に欠けている部分がないか調べる |
| OCT | 網膜や視神経乳頭周囲を撮影し、網膜神経線維の厚さなどを確認する |
近視が強い人が目の健康を守るために大切なこと

緑内障は、初期には自覚症状がほとんどないまま進行する病気です。
近視が強いと緑内障だけでなくさまざまな病気のリスクが上昇するため、見え方に問題がないからと安心せず、定期的に目の状態を確認しましょう。
ここでは、近視が強い人が目の健康を守るために大切なポイントを紹介します。
20代から緑内障検査を受けておく
強度近視の方は若年でも緑内障を発症することがあり、さらに視野の中心付近から障害されるケースもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
特に、メガネやコンタクトレンズの度数が強い方、家族に緑内障の方がいる場合などは、気になる症状がなかったとしても、若いうちに一度、緑内障の検査を受けておくことをおすすめします。
緑内障の発症を完全に予防することは難しいものの、早い段階から眼科を受診し、目の状態を記録しておけば、その後に変化が生じた際の比較にも役立つメリットもあります。
緑内障疑いがある場合は定期的に検査を受ける
健康診断や眼科で「緑内障疑い」「視神経乳頭陥凹拡大」などを指摘された場合は、医師の指示に従って定期的な間隔で検査を受けましょう。
視神経乳頭陥凹拡大とは、視神経の出口の凹みが通常より大きくなっている状態のことで、近視が強いと視神経乳頭に異常が生じやすい傾向にあります。
緑内障の治療法
緑内障治療は、眼圧を下げて視野障害の進行をできるだけ抑えることを目的に行います。
点眼治療が基本ですが、症状に応じてレーザー・手術などの治療を検討することもあります。
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| 点眼薬 | 眼圧を下げる治療の中心。1剤で不十分な場合は複数の薬剤や配合剤を使用する |
| 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT) | 線維柱帯にレーザーを照射し、房水の流れを改善して眼圧を下げる |
| レーザー虹彩切除 | 閉塞隅角緑内障で虹彩に開口部を作り、房水の流れを改善する |
| 手術 | 点眼薬やレーザーでも眼圧が十分に下がらず、視野障害が進行する場合などに検討する |
近視と緑内障についてのよくある質問
ここからは、近視と緑内障についてよくある質問に回答します。
Q:強度近視は緑内障の進行速度に関係しますか?
A:強度近視を伴う正常眼圧緑内障では、若い年代でも緑内障が進行する可能性があります。
近視の目の緑内障は進行が遅いとする疫学データもありますが、強度近視を伴う開放隅角正常眼圧緑内障の患者さんを対象にした2025年の研究では、若い方は高齢の方と比べて緑内障の進行が速いことが示されました。
(参考:Jaekyoung Leeら『Rate of Progression Among Different Age Groups in Glaucoma With High Myopia: A 10-Year Follow-Up Cohort Study』)
Q:強度近視で緑内障が起こる確率はどのくらいですか?
A:「強度近視だと何%の確率で緑内障になる」と示すことは難しいですが、海外の研究では、近視が1D強くなるごとに、開放隅角緑内障のリスクが約20%高くなることが報告されています。
さらに、−6D付近からリスクの上昇が大きくなり、−8Dを超えるとより急激に高くなる傾向がみられました。
(参考:Ahnul Haら『Degree of Myopia and Glaucoma Risk: A Dose-Response Meta-analysis』)
Q:どのくらいの近視から緑内障に注意すべきですか?
A:近視が強くなるほどリスクが上昇する一方、軽度の近視でも緑内障との関連はみられるため、「この度数までは大丈夫」という明確な境界はありません。
多治見スタディでは、−1.00〜−3.00Dほどの弱度近視でも緑内障のリスクが約1.85倍となっていました。
(参考:Yasuyuki Suzukiら『Risk factors for open-angle glaucoma in a Japanese population: the Tajimi Study』)
Q:視野検査で正常でも緑内障の治療が必要ですか?
A:緑内障の代表的な症状が「視野の欠け」ですが、視野検査で異常がなくても、OCT(光干渉断層計)検査などで異常が見つかることがあります。
これは「前視野緑内障」といい、ごく初期段階の緑内障にあたります。
前視野緑内障の段階ですぐ点眼治療を始めるか、経過観察とするかは、目の状態、年齢、その他のリスク要因などを考慮して判断します。
まとめ
近視は緑内障のリスク要因の一つであり、度数が強いほど発症や重症化のリスクが高まります。
また、強度近視の目は視神経乳頭の変形などで診断が難しい傾向にあるため、注意が必要です。
緑内障は初期には自覚症状がほとんどなく、一度失われた視野は現在の治療では元に戻すことはできません。
一方で、緑内障は早く見つけて治療を続ければ、進行をゆるやかにできる病気であるため、早期発見のためにも定期的に目の状態を確認しましょう。
東武練馬駅南口から徒歩1分のつつみ眼科クリニックでは、緑内障を専門とする医師3名が在籍し、眼圧検査・視野検査・OCTなどによる診断から、点眼・レーザー・日帰り手術まで対応しています。
近視があり緑内障が心配な方や、検診で視神経の異常を指摘された方は、ぜひ一度ご相談ください。