
近年、日本や世界中で近視になる方が増えています。
「近視は一度なったら治らない?」「トレーニングや食べ物で視力を回復できる?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
近視の多くを占める軸性近視は眼軸長(眼球の前後の長さ)が伸びることで起こり、一度伸びた眼軸長を自力で元に戻す方法は現在ではありません。
しかし、近視の進行を抑える治療、裸眼視力の改善を目指す治療など、年齢や目的に応じた選択肢があります。
この記事では、近視を治す・矯正する・進行を抑えることの違いから、子どもと大人それぞれの治療、自力で近視を治せるのかまで詳しく解説します。
近視とは?

近視とは目に入った光が網膜より手前でピントを結ぶ状態で、近くはよく見えるものの、遠くのものはぼやけて見えます。
近視には、眼軸長が伸びる「軸性近視」と、角膜や水晶体の屈折力が強い「屈折性近視」があり、多くは軸性近視です。
子どもの場合は成長に伴って眼軸長が伸び、近視が進行することがあるため、近視が気になる場合は早めに眼科で検査を受けて適切な治療を始めることが大切です。
▶近視の原因│悪化や増加の理由は?リスクが高い人の特徴・進行抑制と治療
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近視を回復させることはできる?
「近視を回復させる」といっても、何をもって回復とするかによって意味が変わってきます。
ここでは、近視における「治す」「矯正する」「進行を抑える」という3つの違いや仮性近視について解説します。
近視を「治す」「矯正する」「進行を抑える」の違い
近視治療において「治す」「矯正する」「進行を抑える」は似た言葉に見えますが、別のものです。
現在の医学では、一度伸びた眼球の形(奥行き)を元に戻すことはできないため、軸性近視を完全に治すことはできません。
眼鏡やコンタクトレンズでの「矯正」では、光の屈折を調整して見え方を改善しますが、軸性近視の原因となる眼軸長そのものを元に戻すものではありません。
また、子どもの近視進行抑制治療も、すでにある近視を消失させることが目的ではなく、将来的な進行を抑えるために行われます。
| 目的 | 意味 | 主な方法 |
|---|---|---|
| 治す | 近視そのものを元の状態へ戻す | 伸びた眼軸長を短くする方法はない |
| 矯正する | 網膜上にピントが合うよう調整し、見え方を改善する | 眼鏡、コンタクトレンズ、オルソケラトロジー、手術など |
| 進行を抑える | 近視が強くなる速度を抑える | 低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、近視進行抑制眼鏡・コンタクトレンズなど |
軸性近視そのものを完全に治すことは難しいものの、適切な治療を行うことで、子どもの場合は近視の進行を抑制したり、大人も裸眼での見え方を改善することが可能です。
仮性近視であれば改善することもある
仮性近視(偽近視)とは、ピントを合わせる調節が過剰に働くことで、一時的に近視のような状態になるものです。
ものを見るときは、毛様体筋という筋肉が収縮することで、水晶体(目の中のレンズ)の厚みが変わり、ピントをあわせています。
しかし、近くを見る作業が続くと毛様体筋が緊張したままになり、一時的に遠くが見えにくくなることがあります。この状態が仮性近視です。
仮性近視の場合、眼科での治療や生活習慣を見直すことで、視力が改善する可能性があります。
ただし、症状だけで本当の近視と仮性近視を見分けることはできません。
眼科での検査が必要になるため、自己判断でトレーニングを続けるのではなく、まずは検査で原因を確かめましょう。
子どもの場合は近視を抑制することが重要

近視は、発症年齢が早いほど将来的に強い近視(強度近視)になりやすいことが分かっています。
強度近視になると見えにくくなるだけでなく、将来的に緑内障や網膜剥離、近視性黄斑症などを発症するリスクも高くなるため、早い段階から進行状況を把握し、近視をできるだけ進行させないことが大切です。
なお、近視の進行に注意が必要なのは子どもだけではありません。
これまで近視は子どもから10代にかけて進行しやすく、成人すると進行は落ち着くと考えられてきました。
しかし、近年では大人になってからも眼軸長が伸び、近視が進行する場合があることがわかってきています。
日本人の成人9,195人を対象とした研究では20歳以上でも眼軸長の伸長が確認され、特に若年、女性、既存の強度近視などが比較的大きな眼軸伸長と関連していました。
そのため、大人も近視の進行に注意し、定期的に目の状態を確認することが大切です。
近視を自力で治すことはできる?
「できれば眼科に行かず、自力で近視を治したい」と考える方もいるでしょう。
ここからは、自力でできる近視対策としてよく挙げられるものについて解説します。
食べ物やサプリメント
目の健康にいい栄養素としては、アントシアニン・ルテイン・ゼアキサンチン・クロセチンなどが知られています。
しかし、近視そのものを治したり、裸眼視力を回復させたりする効果が確立された食べ物やサプリメントは、現時点ではありません。
一部の栄養成分について近視の進行抑制との関連が研究されていますが、現時点では十分なエビデンスが確立されておらず、食事やサプリメントだけで近視を治療することはできません。
(参考:Clara Martinez-Perez , Ana Paula Oliveira『Nutritional Supplementation for Myopia Prevention and Control: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials』)
マッサージ
軸性近視(眼球の奥行きが伸びる近視)をマッサージだけで元に戻すことは難しいといえます。
疲れ目や眼精疲労が気になる場合は、優しい力でのマッサージを行うことで、「目がすっきりした」「疲れが軽くなった」と感じることはあるでしょう。
目のトレーニング
「遠くと近くを交互に見る」「遠くの一点をじっと見つめる」「まばたき運動をする」「眼球をぐるぐる回す」などの目の筋肉を動かすトレーニングでも、一度伸びた眼軸長を治すことはできません。
しかし、目の筋肉をほぐすことで、目の疲労回復効果は期待できます。
遠くを見て目を休めることは近視予防に効果があることがわかっているため、目のケアとして取り入れるといいでしょう。
近視の進行を抑制する治療法

近視進行抑制治療は、眼軸長の伸びなどによって近視が強くなるのを抑えることを目的とした治療です。
特に成長期の子どもでは近視が進みやすいため、早い段階から進行状況を確認し、必要に応じて治療を検討することが大切です。
ここでは、近視の進行を抑制する治療法を紹介します。
| 治療法 | 方法 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 低濃度アトロピン点眼 | 低濃度アトロピンを点眼 | 眼軸長の伸長を抑え、近視進行を抑制 |
| 近視進行抑制メガネ | 専用眼鏡を日中に装用 | DIMS技術によって近視進行を抑制 |
| 近視進行抑制ソフトコンタクトレンズ | 1日使い捨てソフトコンタクトレンズを装用 | 視力補正と近視進行抑制 |
| オルソケラトロジー | 専用レンズを就寝中に装用 | 日中の裸眼視力改善と近視進行抑制を目指す |
低濃度アトロピン点眼 リジュセアミニ(点眼治療)
低濃度アトロピン点眼 リジュセアミニは、近視の進行を抑えることを目的として国内で承認されている低濃度アトロピン点眼薬で、眼軸長の伸長や近視の進行を抑える効果が確認されています。
5~15歳を対象とした3年間の比較試験(300例)では、約38%の抑制効果がみられました。
毎晩寝る前に1回点眼する方法のため、小さな子どもでも取り入れやすい点が特徴です。
近視進行抑制メガネ(DIMSレンズ ミヨスマート)
DIMSレンズ ミヨスマートは、特別なレンズを使用した近視進行抑制メガネです。
中央は通常の度数のレンズになっており、その周囲を多数の微小レンズが囲む構造になっています。
この構造により、眼軸長の伸長を抑え、近視の進行を抑制します。
普通のメガネと同じような感覚で使えるため、コンタクトレンズ装用が難しい小さな子どもも使いやすく、強い近視や乱視の場合も矯正できることがメリットです。
近視進行抑制ソフトコンタクトレンズ(マイサイトワンデイ)
マイサイトワンデイは、近視を矯正しながら進行を抑えることを目的とした小児向けの1日使い捨てソフトコンタクトレンズで、国内では2025年8月に承認されました。
レンズには近視を矯正する「屈折矯正ゾーン」と進行を抑える「トリートメントゾーン」が同心円状に交互に配置されています。
屈折矯正ゾーンで視力を補正し、トリートメントゾーンによるデフォーカスによって近視の進行を抑制する仕組みです。
−0.5D〜−10.0Dまで対応しており、近視が強くオルソケラトロジーの適応から外れた方や、オルソケラトロジーのレンズが痛くて続けられなかった方に向いています。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、夜寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用して角膜の形を変え、日中を裸眼で過ごせるようにする方法です。
近視を矯正するだけでなく、眼軸の伸びを抑える効果も認められており、保護者の方が管理しながら使えるため、6歳頃から取り入れられます。
子ども向けの治療というイメージを持たれることが多いですが、大人でも治療を受けることが可能です。
近視を矯正する手術

近視では、眼鏡やコンタクトレンズで光の屈折を調整する以外にも、手術によって屈折を矯正し、裸眼視力の改善を目指す方法があります。
ICL
ICLとは、角膜に3mmほどの小さな切開を入れ、虹彩と水晶体の間に柔らかいレンズを挿入して近視を矯正する手術です。
レーシックとは異なり角膜を削らないため強い近視でも手術が可能で、必要に応じてレンズの摘出や交換ができることが特徴です。
点眼麻酔を使った手術で痛みはほとんどなく、手術時間は片目約10分・両目約20分が目安です。
白内障手術
白内障手術は、白く濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを入れる手術です。
手術の際、眼内レンズの度数を調整することで、もともとあった近視の改善が期待できます。
眼内レンズには大きく分けて単焦点と多焦点があり、希望する見え方や生活スタイルなどを考慮して選びます。
| 項目 | 単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ |
|---|---|---|
| ピントが合う距離 | 1か所(遠くか近くを選ぶ) | 遠く・中間・近くなど複数 |
| 見え方 | くっきりしやすく、ハロー・グレアを抑えられる傾向にある | コントラスト感度が下がり、ハロー・グレアが起こりやすいレンズもある |
| メガネは必要か | ピントを合わせていない距離ではメガネが必要 | メガネを使う場面を減らせる傾向にある(場面によって必要になることもある) |
| 費用の扱い | 保険診療 | 選定療養(手術費は保険、レンズ代は自費) |
近視の進行を予防する方法
一度伸びた眼軸長はもとに戻すことができないため、近視が進みやすい生活環境を見直すことが大切です。
30cm以上離して見る、30分に1回は手を止めて遠くを見る、手元を十分に明るくして作業するなどを意識して過ごしましょう。
また、子どもの場合、1日2時間程度を目安に屋外活動の時間を確保することで、近視抑制効果が期待できます。
まとめ
多くの近視の原因である眼軸長の伸び自体を治すことはできないものの、適切な治療を受けることで、近視の進行を抑制したり、視力の改善を目指すことが可能です。
また、外で過ごす時間を増やす、画面や本との距離と休憩を意識するといった近視予防のための習慣はすぐに取り入れやすい方法であるため、ぜひ今日から実践してみてください。
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近視が進んでいる、眼鏡なしで生活したいなどのお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。