
近年、世界中で子どもの近視は増加しています。
「子どもの近視を予防するために家庭でできることはある?」「スマホやゲームはやめさせたほうがいい?」と気になっている保護者の方も多いでしょう。
近視には遺伝だけでなく、屋外で過ごす時間や近くを見る作業など、生活環境も関係していると考えられています。
一度伸びてしまった眼軸長(目の奥行き)は元の状態に戻すことが難しいため、発症や進行を遅らせるための日々の対策が重要です。
この記事では、外で過ごす時間の目安、本や画面との距離、スマホ・ゲームとの付き合い方など、近視予防のためにできることを解説します。
近視とは

近視とは、遠くから入った光が網膜よりも手前で焦点を結び、遠くのものがぼやけて見える状態です。
近視は、日本人を含めたアジア人でよく見られ、子どもの近視では、「眼軸長(眼球の前後の長さ)」が伸びる軸性近視が多い傾向にあります。
一度伸びた眼軸長を元に戻すことは難しいため、できるだけ発症を防ぎ、始まった場合は進行を抑えることが大切です。
▶近視の原因│悪化や増加の理由は?リスクが高い人の特徴・進行抑制と治療
▶近視・遠視・乱視の見え方と矯正方法│老眼との違いや予防法・注意点も解説
近視の進行予防のために今日からできる9つの対策

近視には「遺伝的な要因」と「環境的な要因」の両方が関係しています。
遺伝的な要因を変えることは難しいものの、環境的な要因は、家庭でも対策が可能です。
- 1日2時間を目安に屋外で過ごす
- 本や画面から30cm以上離れて見る
- 30分近くを見たら20秒以上遠くを見る
- 勉強や読書は十分な明るさを確保する
- スマホ・ゲーム・タブレットを長時間続けない
- 近くを見るときの姿勢に注意する
- 栄養バランスの良い食事を心がける
- 十分な睡眠をとる
- 定期的に視力を確認する
ここからは、上記の対策についてそれぞれ詳しく紹介します。
1日2時間を目安に屋外で過ごす
屋外で過ごす時間が短い子どもほど近視になりやすいことがわかっており、日本眼科医会でも近視の有無に関わらず、子どもに1日2時間の屋外活動を勧めています。
中国の小学生を対象とした研究では、学校で毎日40分の屋外活動を追加したグループは、3年間の近視発症率が30.4%で、通常どおり過ごしたグループの39.5%より低い結果が出ています。
まとまった2時間を確保しなければいけないわけではないため、例えば「登下校30分+学校の休み時間30分+放課後の外遊び60分」と分けると、屋外にいる時間を確保しやすいでしょう。
なお、無理に強い日差しを浴びる必要はありません。熱中症や紫外線のリスクもあるため、暑い日は木陰などを活用しましょう。
(参考:公益社団法人 日本眼科医会『気をつけよう!子どもの近視』)
本や画面から30cm以上離れて見る
読書や宿題、スマートフォンなどで近くを見るときは、見る対象と目の距離を30cm以上確保しましょう。
子どもは集中すると次第に顔が近づきやすいため、最初だけでなく途中でも距離を確認してあげることが大切です。
30分近くを見たら20秒以上遠くを見る
宿題や読書、動画視聴などに集中すると、近い距離を長時間見続けてしまいがちです。
近くを見る作業は30分程度でいったん区切り、20秒以上は画面や本から目を離す習慣をつけましょう。
大人の場合、仕事の休憩中までスマートフォンを見るのではなく、窓の外など離れた場所へ視線を移し、目を休めることが大切です。
勉強や読書は十分な明るさを確保する
暗い場所では文字や画面を見るために顔が近づきやすくなり、適切な距離を保ちにくくなります。
勉強や読書などをするときは、部屋全体の照明とデスクライトをうまく組み合わせるなどして、十分な明るさを確保しましょう。
スマホ・ゲーム・タブレットを長時間続けない
スマホ・ゲーム・タブレットなどは、集中してしまい、小さな画面を近い距離で長時間見続ける状況になってしまいがちです。
これらの機器単体がどの程度目に影響するかはまだ特定されていないものの、近業時間が多いほど近視と関連することはよく知られています。
また、スマートフォンやタブレットなどの使用時間が長い人ほど、近視が多い傾向を示した研究もあります。
(参考:Foreman J, et al.『Association between digital smart device use and myopia: a systematic review and meta-analysis』)
近くを見るときの姿勢に注意する
猫背や寝転がった姿勢で本やゲームを見ていると、目と対象の距離が近くなってしまいがちです。
背筋を伸ばし、目と対象の距離を30cm以上に保てる姿勢を心がけましょう。
机や椅子の高さが身体に合っているか確認することも大切です。
栄養バランスの良い食事を心がける
「これを食べれば近視を予防できる」という食品はありませんが、体の健康と同じで、目の健康を保つうえでも栄養バランスの整った食生活は大切です。
目に良いとされる栄養素にはさまざまなものがありますが、特定の食品に偏るのではなく、いろいろな食品をバランスよく食べることを意識しましょう。
十分な睡眠をとる
睡眠と近視の関係は、近年研究が進んでいるテーマで、2024年の研究では睡眠不足と近視の有病率に関連性があることが報告されています。
また、さまざまな研究をまとめたメタ解析でも、睡眠時間が短いほど近視のリスクが高くなる傾向が報告されています。
十分な睡眠を確保し、生活リズムを整えることは成長期の子どもの健康のために大切なことであるため、夜更かしを避け、年齢に応じた睡眠を確保しましょう。
(参考:Zhao X, et al.『Effects of Insufficient Sleep on Myopia in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis』)
(参考:Liu X, et al.『Association between sleep duration and myopia in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis』)
定期的に視力を確認する
子どもは「見えにくさ」を感じていても、それを自覚していなかったり、言葉でうまく伝えられなかったりすることが多いです。
学校健診の結果だけでなく、日常生活で「目を細める」「テレビへ近づく」「黒板が見えにくい」といった変化がないか確認するようにしましょう。
また、近視が進行すると眼軸長が伸びますが、6歳から12歳(特に6歳から9歳まで)で伸びることが多いため注意が必要です。
「近視かもしれない」と思っているものの、まだ眼科を受診していない場合は、一度早めに相談してみることをおすすめします。
近視予防のためにはスマホ・ゲームは禁止しないとダメ?
近視予防のために、スマホやゲームを完全に禁止する必要はありません。
大切なのは「近い距離を長時間見続ける生活」を見直すことです。
文部科学省の調査によれば「目を休めるルールを決めていない、または決めても守れていない」子どもが半数〜7割以上だったといいます。
使い始める前に「1時間だけ」のようにルールを決めるなど対策しておくことが大切です。
(参考:文部科学省『子供たちの目を守るために 知っておきたい近視の知識』)
なぜ起こる?子どもの近視の原因とリスク
子どもの視力低下は、日本でも大きな課題となっています。
「親が近視だから遺伝したのでは?」「スマホを見せすぎたのが原因?」など、子どもの近視の原因が気になる方も多いでしょう。
近視は一つの原因だけで起こるものではなく、遺伝的要因や近くを見る時間、屋外活動などの環境的要因が複雑に関係していると考えられています。
近視は「遠くが見えにくいだけ」と考えられがちですが、度数が強くなるほど将来の目の病気のリスクが高くなるため注意が必要です。
近視は近視性黄斑症や網膜剥離、開放隅角緑内障などと関連し、強度近視ほどリスクが高くなります。
低年齢で近視を発症するほど、強度近視になるリスクが高まるため、進行させないためにも早めの治療を始めましょう。
眼科で行う近視の進行予防のための治療法

眼科では、点眼治療やメガネ、コンタクトレンズなどさまざまな方法で近視を抑制する治療が可能です。
それぞれ使用方法や適応が異なるため、お子さんの年齢や目の状態、生活スタイルを踏まえて検討しましょう。
| 治療法 | 使用・装用方法 | 対象年齢の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 近視進行抑制眼鏡(DIMSレンズ ミヨスマート) | 日中に眼鏡として装用 | 5〜18歳 | 通常の眼鏡と同じように近視を矯正しながら、近視の進行抑制を目指す |
| 低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ) | 1日1回、夜に点眼 | 幼児も可能 | 低濃度アトロピンによって眼軸長の伸びを抑え、近視の進行抑制を目指す |
| オルソケラトロジー | 就寝中に専用のハードコンタクトレンズを装用 | 6歳頃〜 | 就寝中に角膜の形状を変化させ、日中の裸眼視力を改善。眼軸長の伸びを抑える効果も報告されている |
| 近視進行抑制ソフトコンタクトレンズ(マイサイト ワンデイ) | 日中に1日使い捨てソフトコンタクトレンズを装用 | 10歳頃〜 | 近視を矯正しながら、近視の進行抑制を目指す |
近視進行抑制眼鏡(DIMSレンズ ミヨスマート)
DIMSレンズは、通常の眼鏡と同じように近視を矯正しながら、近視の進行を抑えることを目的とした特殊なレンズです。
近視進行抑制効果が認められており、中止した場合のリバウンドも見られなかったことが報告されています。
近視や乱視の度数が強くても対応でき、コンタクトレンズが難しい低年齢のお子さん(5歳から)にも使いやすい点が特徴です。
点眼治療(低濃度アトロピン点眼 リジュセアミニ)
低濃度アトロピン点眼は、低濃度のアトロピンを使用し、眼軸長の伸びを抑えて近視の進行を抑制することを目的とした治療です。
1日1回就寝前に点眼するだけなので、小さなお子さんでも続けやすい方法です。
主な副作用にまぶしさ・ぼやけがありますが、寝る前に使うため日常生活に支障が出る方は多くありません。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、就寝中に特殊なハードコンタクトレンズを装着して角膜の形状を変えることで、日中を裸眼で過ごせるようにする方法です。
近視を矯正するだけでなく、子どもの眼軸長の伸びを抑える効果も報告されています。
慣れるまでは痛みや異物感があり、洗浄が不十分だと角膜感染症やアレルギー性結膜炎を起こすリスクがあるため、適切に管理することが大切です。
近視進行抑制ソフトコンタクトレンズ(マイサイト ワンデイ)
マイサイト ワンデイは近視の矯正と進行抑制を目的とした小児向けの1日使い捨てのソフトコンタクトレンズで、2025年8月に国内で承認されました。
痛みでオルソケラトロジーを続けられなかった方や、近視が強くオルソケラトロジーの適応外となった方にとって、選択肢の一つになるでしょう。
ただし、乱視用のレンズはなく、光の周りに輪が見えるハロー、光がにじむグレアが出る可能性があります。
近視の進行予防についてのよくある質問
ここからは、近視についてのよくある質問を紹介します。
Q:どのくらいの視力になったらメガネが必要ですか?
A:教室の後ろから黒板を見ることを考えると、「裸眼視力が0.7以下になったらメガネを用意する」のが一つの目安とされています。
幼児期に強い屈折異常を放置すると、矯正しても視力が十分に育たない「弱視」になる可能性もあるため、お子さんの見え方が気になる場合は一度早めに眼科での相談がおすすめです。
Q:大人の近視はどうやって予防すればいいですか?
A:眼軸長は成長とともに伸び、20代後半までは近視の進行が見られるといいます。
大人の場合も基本は子どもと共通しており、近くを見る作業を長時間続けない、適切な距離を保つ、定期的に視力や眼底を確認するといった対策を心がけましょう。
Q:大人になってから近視を治すことはできますか?
A:一度長くなった眼軸長を短くする方法はなく、近視そのものを根本から治すことはできません。
ただし、眼鏡やコンタクトレンズを使わずに見えるようにする屈折矯正手術があり、その一つがICL(眼内コンタクトレンズ)です。
ICLでは角膜を削らず、虹彩と水晶体の間に専用レンズを挿入します。
まとめ
近視を完全に防ぐことはできませんが、屋外で過ごす時間を確保する、近くを長時間見続けない、適切な距離を保つなど、進行を抑えるための対策は可能です。
また、すでに近視が始まっている場合は、眼科で進行抑制治療を検討する方法もあります。
東武練馬駅南口から徒歩1分のつつみ眼科クリニックでは、小児眼科専門の視能訓練士による検査と小児を専門とする医師の診察のもと、点眼・眼鏡・オルソケラトロジー・ソフトコンタクトレンズから、お子さんに合う近視進行抑制治療をご家族と相談して選んでいます。
お子さんの視力低下や近視の進行が気になる場合は、まずはお気軽にご相談ください。