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「最近目が悪くなった気がする」
「ものがぼやけて見えるようになった」
「子どもの視力低下が気になる」
このような症状にお悩みではありませんか？近年、近くのものは見えるものの、遠くがぼやける「近視」に悩む人が増えてきています。
この記事では、近視はどのような仕組みで起こるのか、原因や種類、近視が増えている理由についてわかりやすく解説します。
近視を進行させないための日常生活での注意点や、病院での近視進行抑制治療なども合わせて紹介しますので、近視について理解して、治療や予防に活かしてみてください。
近視とは
目はカメラのような構造を持っており、角膜と水晶体がレンズ、網膜がフィルムの役割を果たしています。
角膜が光を取り込み屈折し、水晶体がピントを調整、網膜でピントが合うことで、像として認識する仕組みです。
近視とは、この光の焦点が網膜より前で結ばれる状態を指します。
近視では近くのものにはピントを合わせられるものの、遠くのものを見るときはうまくピントが合わせられず、ぼやけて見えるようになります。
きちんとピントが合う状態を「正視」といい、反対にピントが合わない目を「屈折異常」といいます。屈折異常は大きく、近視・遠視・乱視の3つがあります。
近視は進行抑制が重要な理由
近視の多くは眼軸長（角膜頂点から網膜までの長さ）が伸びることで起こりますが、眼軸長は一度伸びると元に戻すことはできません。
しかも、眼軸長は近視になった年齢が早いほど伸びが大きくなります。
小学校に上がる前の年齢で近視を発症した場合、近視進行を抑制する治療をしないと、強度近視になる可能性が高まるため、早めに進行抑制治療を始めることが大切です。
近視の強さと病気のリスクの関係
近視は見えにくくなってしまうだけでなく、病気のリスクも高めることがわかっています。
近視があると、緑内障・網膜剥離・近視性脈絡膜新生血管など失明につながる疾患の発症リスクが上昇し、さらに近視の程度が強いほどそのリスクが高まります。
近視の強さは、「D（ディオプター）」という単位で表され、数値が大きくなるほど近視が進んでいることを示します。
裸眼のままでのピントの合う距離（焦点距離）が短いほど度数が数値が高くなり、例えば1ｍの場合は−1D、50cmの場合は−2Dです。−6D以上になると、強度近視と呼ばれます。
以下で、近視の強さと目の病気のリスクの高さの表を見てみましょう。
| 近視度数 | 白内障 | 緑内障 | 周辺部網膜変性 | 網膜剥離 | 近視性黄斑症 |
| 弱度近視（-1 to -3D） | 2倍 | 4倍 | 6倍 | 3倍 | 2倍 |
| 中等度近視 （-3 to- 6D） | 3倍 | 4倍 | 18倍 | 9倍 | 10倍 |
| 強度近視（> -6D） | 5倍 | 14倍 | 40倍 | 22倍 | 41倍 |
（出典：公益社団法人 日本眼科医会『気をつけよう!子どもの近視』）
近視の強度と病気のリスクは比例関係にあるといえるため、視力矯正のみにとどまらず、目の健康そのものを守るという視点からも、早めのケアが大切です。
なぜ起こる？近視の原因
近視が起こる仕組みの多くは、眼軸長が伸びることが理由です。また、角膜・水晶体の屈折力が強いことで近視が起こることもあります。
このような近視は「遺伝」と「環境」という主に2つの要因が複雑に関わって起こると考えられています。
ここからは、それぞれの近視の原因について詳しく解説します。
遺伝要因
さまざまな研究により、近視のなりやすさは、祖父母や親などからの「遺伝」が大きく影響していることがわかってきました。
両親のどちらかが近視である場合、子どもが近視になる確率は約2倍、両親とも近視なら約5倍といわれ、さらにアジア人は他の人種と比べて近視が多い傾向にあります。
また、近視には「単純近視」と「病的近視」の2種類があります。
「単純近視」は眼鏡やコンタクトレンズで矯正できる近視、「病的近視」は網膜や視神経などに病的な変化が起きることで矯正しても視力が改善しにくい近視です。
特に「病的近視」は遺伝による影響が大きいと考えられています。
遺伝による影響を防ぐことはできないものの、生活習慣の改善や早期治療によって、進行を抑制することは可能です。
近年では、近視に関わる遺伝子を解析し、遺伝的に近視になる可能性の高さを判定する「近視遺伝子検査」もできるようになっています。
環境要因
目の酷使や目に良くない生活習慣などの環境要因も、近視の発症や進行に影響しています。
現代の近視増加理由の中心と考えられているのが、まさにこの環境要因です。
- スマホ・タブレット・パソコンなどの画面を近距離で長時間見る
- 屋内で過ごす時間が多い
手元にばかりピントを合わせる時間が長いと、目はそれに順応し、眼軸長が伸びてしまうといわれています。
また、多くの研究で子どもの屋外活動時間が長いほど近視になりにくいことが示されていますが、近年は屋外活動が減少しがちであることも、近視の増加に影響していると考えられています。
子どもの近視と大人の近視は原因が違う？
同じ近視でも、子どもと大人では、主な進行のメカニズムに違いがあります。
近視の多くは、目が成長する過程で起こります。赤ちゃんは軽い遠視で生まれますが、成長とともに眼球が大きくなって正視眼（網膜にぴったりピントが合う状態）になります。
しかし、何らかの原因によって眼軸長が伸びすぎてしまうと、近視になるのです。子どもの近視の多くが、この「軸性近視」と呼ばれるタイプです。
一方、大人の場合は加齢に伴い角膜や水晶体の屈折力が変化し、近視が進行するケースが多い傾向にあります。これを「屈折性近視」といいます。
ただし、例外もあります。
これまで、通常なら近視の進行は20代後半までといわれていましたが、近視が強い人の場合、20代後半を過ぎても眼軸長が伸び、近視が進行することがわかってきました。
また、近年ではスマホやパソコンなど近くを見る作業が増えていることもあり、大人になってから近視を発症したり、進行したりする可能性があるため注意が必要です。
近視の種類
近視は大きく「軸性近視」と「屈折性近視」に分けられます。それぞれ解説します。
軸性近視
軸性近視は、眼球の奥行き（眼軸）が伸びることで焦点位置が手前にずれてしまう近視です。
近視の多くがこの軸性近視で、一般的に近視という場合はこの軸性近視を指します。
子どもの成長期に進行しやすいことが知られており、軸性近視は眼軸が伸びることで網膜が引き伸ばされ、将来的に病気のリスクが高まりやすくなります。
一度伸びてしまった眼軸長は元に戻せず、「治す（短くする）」ことはできません。
そのため、軸性近視は進行を抑えることが特に重要であり、子どもの場合は早期から治療を開始することが大切です。
屈折性近視
屈折性近視は、角膜や水晶体の屈折力が強すぎることで焦点が手前にずれてしまうタイプの近視です。
近くを見続けることなどで目の筋肉（毛様体筋）が異常に緊張することで起こり、一時的な近視であるため眼科での治療や目の休養、トレーニングなどで治る可能性があります。
近視が増加している原因
近年、世界中で近視の人が増加しています。現在のペースのまま行けば、2050年には全世界人口の約半数の47億5800万人が近視になるとする調査もあるほどです。
（出典：Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050）
世界的に近視が増えている背景には、生活スタイルや学習環境の変化といった環境要因が大きく関わっていると考えられています。
特に子どもから若年層では、スマートフォンやタブレットを使う時間が長くなり、近距離での作業が日常化しています。
文部科学省の『児童生徒の近視実態調査について』によれば、裸眼視力が1.0に満たない子どもの割合はいずれの年代でも増加しており、特に小学生は昭和54年と令和5年では2倍以上です。
出典：文部科学省『児童生徒の近視実態調査について』
また、屋外で遊ぶ機会が減り、自然光を浴びる機会が少なくなったことも近視増加の一因でしょう。
近視になりやすい人・リスクが高い人
以下に当てはまる方は、近視になりやすい・リスクが高い可能性があります。
- 親や祖父母が近視である
- 20cm以内の近距離でスマホやパソコン、読書をしている
- 1時間以上、スマホやゲームを続けて行う
- 屋外で過ごす時間が少ない
- 暗い場所での作業や姿勢が悪いまま近くを見る作業をしている
目を守るためにも、早めに対策を始めましょう。
近視の進行を抑制するために！日常生活での対処法
近視の進行をできるだけ遅らせるために、日常生活でもできることはたくさんあります。
簡単にできる工夫ばかりなので、ぜひこれから紹介する対策を取り入れてみてください。
日光を浴びる
近年、世界中の数多くの研究で、屋外で日光を浴びる活動が近視進行抑制に役立つと報告されています。
日光に含まれるバイオレットライトが眼軸の伸びを抑える働きがあると考えられており、特に1日2時間程度の屋外活動は、子どもの近視リスクを下げる有効な方法として推奨されています。
大人にとっても外で歩く、散歩する、休憩時間に外の空気を吸うといった行動は目をリフレッシュさせられるためおすすめです。
熱中症や紫外線の対策も行いつつ、無理のない範囲で日光を取り入れてみましょう。
近くを見る作業では30cm以上離す
スマートフォンやタブレットを目の前に近づけすぎると、水晶体が厚くなりピント調節筋が常に緊張した状態になってしまいます。
この状態が続くと近視の進行につながるため、近くを見る際には30cm以上の距離を保つことを意識しましょう。
机に向かう際は椅子や机の高さを調整し、自然と距離が確保できるように環境を整えると近視予防に役立ちます。
特に子どもは顔を近づける癖がつきやすく、気づかないうちに目への負担が大きくなるため親御さんが注意してあげることが大切です。
20分間ごとに目を休める
長時間の近距離作業は目の疲労を蓄積させ、近視の進行を早める原因になります。
そこで、「20-20-20ルール」を取り入れ、20分間ごとに目を休めるようにしましょう。
20-20-20ルールとは、20分作業したら20フィート（約6m）先を20秒見ることで、調節筋をリセットする方法です。
短時間でも目を休ませる時間を意識的につくることで、ピント調節の負担を軽減できます。
時間や距離は厳密に守らなくても問題ないため、近くを見る作業を連続させず、定期的な休憩を取りましょう。
特にデスクワークが中心の大人や、勉強に集中することが多い学生は、意識的に目を休ませてあげることが大切です。
近視の進行を抑制する治療法・矯正法
「視力が下がった、ぼやけるようになった」「子どもが遠くを見るときに目を細めている」など、近視の症状が見られるときは、一度眼科を受診して検査や治療を行いましょう。
眼科では、通常のメガネやコンタクトレンズでの矯正のほか、以下のようなさまざまな近視進行抑制治療が可能です。
- 低濃度アトロピン治療 リジュセアミニ
- オルソケラトロジー（就寝中につけるコンタクトレンズ）
- 多焦点コンタクトレンズ
- 特殊眼鏡 DIMSレンズなど
- レッドライト療法（ご希望の方はご紹介）
- ICL（眼内コンタクトレンズ）手術による矯正（21歳〜45歳くらいまで強度近視の方）
近視は将来の病気のリスクにも影響するため、早めに治療を開始しましょう。
近視の前兆・気づくサインは？
以下のような症状は、近視のサインかもしれません。
- 遠くの文字がぼやけてよく見えない（看板・標識・黒板など）
- 目を細めて物を見てしまう
- 姿勢が極端に前のめりになる、顔を近づけてしまう
- 頭痛や目の疲れが起こりやすくなった
- 夜に視界が不安定になる、ライトが滲んで見える
- （子どもの場合）目つきが悪い、顔を傾けて見ている、集中できない、親の顔を見ても表情がわからず反応が薄い
近視や遠視、乱視といった屈折異常があると、視力が正常に発達しません。幼児〜小児の時期は視力の発達で最も大切な時期であるため、早めに治療を始めましょう。
子どもは自分の見えづらさを正確に伝えられないことも多いため、周囲が早めに気づいてあげることが大切です。
まとめ
近視の多くは、眼軸長が伸びる事によって起こります。
近視の原因には遺伝と環境の両方が複雑に影響しているとされ、中でも強度近視は遺伝の影響が強いと考えられています。
近年の世界的な近視の増加にはスマートフォンやパソコンの長時間使用・屋外活動時間の減少といったライフスタイルの変化が大きく影響していると考えられ、近視対策のためには生活習慣の見直しも非常に大切です。
近視は将来の目の病気のリスクにもつながるため、「見えにくくなった」という場合は、一度は眼科を受診し相談してみましょう。
つつみ眼科クリニックでは、11名の医師がそれぞれ専門分野を担当し、治療にあたっています。
近視進行抑制治療にも長年取り組んでおり、小児眼科診療にも力を注いでいます。
ご自身やお子さんの視力について、気になることや不安なことがありましたらお気軽に当院までご相談ください。