
ICLは屈折異常(近視・遠視・乱視)を矯正し裸眼で見えるようにすることが目的であり、メガネやコンタクトレンズから解放されたい方から近年注目を集めています。
一生モノとも言われるICLですが「何年持つの?」「寿命はどのくらい?」「交換する必要ないの?」など、手術を受ける前にこんな疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論から言えば、ICLレンズの寿命は半永久的といわれています。
しかし、レンズとは異なり人間の目は老化するため、どんな変化が起こるのか知っておくことが大切です。
この記事では、ICLの寿命や耐久性、長期的な経過、安全性、交換や取り出しが必要なケースなどについて詳しく解説します。
ICLの寿命は半永久的

ICL(Implantable Collamer Lens/眼内コンタクトレンズ)のレンズは耐久性が高く、一般的に40〜50年もの長期使用が可能です。
この耐用年数50年という年数は少なめに見積もられており、実際にはレンズの寿命は人間の寿命より長いともいわれています。
異物も付着しにくく、眼内に挿入するため日々のお手入れも不要です。
ただし、ICL手術後に近視が進行したり、白内障が生じたりと、目の環境が変わることでレンズ交換の検討が必要となることはあります。
ICLは交換や取り出しができる「可逆的な治療」であることも利点の一つで、もしも白内障が発症した場合でも、白内障用のレンズで再び治療が可能です。
レーシックは何年持つ?
ICLとよく比較される矯正方法として、レーシックがあります。
どちらも屈折矯正手術(視力回復手術)という点では共通していますが、レーシックの場合、術後1年以内や術後5〜10年程度で近視戻り(リバウンド)が起こる可能性があるといわれています。
また、寿命だけでなく以下のような違いもあります。
| ICL | レーシック | |
| 角膜への影響 | 角膜を削らない | 角膜を削る |
| 可逆的(元に戻せるか) | 取り出し・交換が可能 | 削った角膜は元に戻せない |
| 適応範囲 | レーシックよりも適応範囲が幅広い | 適応範囲が限られ、角膜が薄い、強度近視の場合などは受けられない |
| ドライアイのリスク | レーシックに比べてリスクが抑えられる | ドライアイが起こりやすいとされている |
ICLの寿命が長い理由

ICLが長期的に安定して機能するのは、生体適合性と耐久性に優れたコラマー素材が使われていることが理由です。ここから詳しく解説します。
優れた生体適合性
ICLレンズの素材である「コラマー」は、コラーゲンとHEMA(ハイドロキシエチルメタクリエート)という素材でできています。
コラマーは生体適合性が高く、体内に入れても異物として認識されにくいことが特徴です。
また、マイナス電荷を帯びていることで、タンパク質や細胞などを寄せ付けないため、目の中での長期安定性にも優れています。
高い耐久性
ICLの素材であるコラマーは柔軟性と強度を併せ持ち、外気に晒されることもないため劣化や変質が起こりにくいことも特徴です。紫外線をカットする効果もあります。
長期の安定性も報告されており、その有効性・安全性から厚生労働省の認可も受けています。
ICLは10年後も効果を実感できる?

ICLは角膜を削らずに視力を矯正できる方法であり、長期的な視力安定性が期待できることも特徴の一つです。
ICLの視力矯正効果は術後10年以上経っても安定しているケースが多数報告されており、ICL手術から10年以上経った後も、約90%の患者さんが1.0以上の裸眼視力を保っていたとする報告もあるといいます。
ICLのレンズ自体は基本的に変質は起こらないため、視力低下が起きた場合の多くは加齢による目の変化が原因です。
白内障や老眼は老化現象であり、年齢を重ねれば誰しも起こり得るため、年齢による変化を考慮した定期検診は必要です。
ICLの長期的な経過は手術を受ける年齢によっても変わる

ICLの素材そのものの寿命は半永久的とされていますが、人間の目の機能には老化が起こります。
個人差はありますが、40〜50代頃から老眼や白内障の症状を感じやすくなることが一般的です。
例えば、25歳で手術を受ける人と、40歳で手術を受ける人では、後者の方がICL手術の恩恵を受ける期間が短くなる可能性があります。
ICLを入れたからといって、加齢による視力の変化は防げないためです。
このため、ICLの適応年齢は原則21歳〜45歳くらいまでが推奨されています。
ICLは何年前からある?安全性や実績について

ICLは近年手術を受ける患者さんが急増しているものの、レーシックと比べて耳慣れないため「新しい治療なのでは?」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、実はICLはレーシックよりも長い歴史を持つ治療です。1986年にヨーロッパで初めて使用され、日本では2010年に厚生労働省の承認を受けています。
ここでは、ICLの安全性や実績について見てみましょう。
世界各国300万件以上の手術実績
ICLは世界で300万件以上の手術実績がある治療法で、特に日本では年間1万件以上のICL手術が行われています。
国内でも15年以上の歴史と実績があり、近年は特に日本国内でICLを受ける人が急増している傾向にあります。
現在のモデルV5(EVO ICL)が登場し安全性が向上
ICLは改良が重ねられたことで合併症リスクが低減し、安全性が向上しています。
当時使われていたのは、「V4モデル」と呼ばれる穴の開いてないレンズでしたが、一部の患者さんが手術後に白内障や眼圧上昇といった合併症を起こすことがあり、この点が課題となっていました。
その後、レンズ真ん中に小さな穴が開いた「V4cモデル」が登場すると、合併症は大幅に低減。海外の研究では、10年間の追跡期間中にICLによる前嚢下白内障の発症はなかったといいます。
現在はこれを更に改良した「EVO ICL(V5モデル)」が主流となっており、中央の小さな穴はそのままに、レンズの光が入る部分が大きくなったことで見え方の質がより高くなっています。
(出典:Journal of Cataract & Refractive Surgery『Ten-year follow-up of posterior chamber phakic intraocular lens with central port design in patients with low and normal vault』)
ICLのレンズの交換・取り出しが必要になるケース

ICLは可逆性がある視力矯正手術で、必要に応じてレンズを取り出したり交換したりできる点が大きな特徴です。
ICLのレンズ自体が劣化して取り出しをするケースはほぼありませんが、視力の変化やレンズのズレ、白内障を発症した場合などはレンズの交換が必要になることがあります。
ここでは、ICLのレンズの交換や取り出しが必要になるケースについて解説します。
レンズサイズの不適合・度数のズレ・乱視角度のズレが起きた場合
ICLは患者一人ひとりの目の形状に合わせてレンズサイズを選択しますが、まれにレンズサイズの不適合が起こることがあります。
レンズが大きすぎる場合は眼圧上昇のリスクがあり、小さすぎるとレンズ位置が安定しにくくなるため、サイズの不適合が起きた場合は適切なサイズのレンズに交換が必要です。
当院では、サイズ不適合のリスクを抑えるため、『CASIA2(前眼部三次元画像解析装置)』と呼ばれる高機能な検査機器を導入し、詳細な事前検査を行っています。
手術後に大幅に視力が変わった場合
基本的に、ICL手術は近視の進行が止まる21歳以降に行いますが、まれに近視が進む方もいます。
多少であれば問題ないものの、大幅に近視が進行した場合は、度数の強いレンズに交換する場合があります。
白内障手術が必要な場合
加齢によって白内障を発症した場合、ICLのレンズを取り出し、白内障用の眼内レンズを入れる手術が必要になる場合があります。
ICLは「有水晶体眼内レンズ」ともいい、水晶体を残したまま行う手術です。そのため、白内障によって水晶体が白く濁ると、視力低下が起こります。
ICL手術後に白内障手術を行う場合、ICLレンズと濁った水晶体を取り除き、白内障用の眼内レンズを入れることで、白内障だけでなく老眼も矯正できます。
手術後に感染症が起きた場合
ICLは手術であるため、合併症のリスクがあります。
非常に稀ではあるものの、感染症によって炎症が起きた場合、ICLを一時的に取り出して洗浄や薬の投与といった処置が必要になるケースもあります。
ICLは、手術後1週間が特に大切な時期であるため、医師の指示を守って過ごし、感染症予防に努めることが大切です。
ICLのレンズの交換費用はいくら?

ICLレンズの交換費用はクリニックによって異なりますが、初回手術と同様の金額がかかることが多く、両目で50〜70万円程度が一般的です。
ただし、手術から一定期間内であれば保証によって費用が安く済むケースもあるため確認しておきましょう。
つつみ眼科クリニックでは、患者さんに安心してICLを受けていただけるよう以下のような保証制度を設けており、ICL手術から3年間以内であればレンズの入れ替え・取り出し費用や位置修正費用は無料です。
| 検査代・診察代・点眼薬代(半年まで) | 無料 |
| 検査・診察代(半年後から) | 5,000円 |
| レンズの入れ替え・取り出し | 3年間無料 |
| レンズの位置修正 | 3年間無料 |
ICLの寿命についてのよくある質問

ここでは、ICLの寿命についてよく患者さんからいただくことの多い質問と回答を紹介します。
Q:ICLレンズが古くなって交換・メンテナンスが必要になることはある?
ICLは寿命が長く、経年劣化も起こりにくいことが特徴です。
ICL導入から35年以上、新しい素材になって15年以上が経過していますが、レンズの経年劣化によって取り替えになったケースはありません。(2025年11月時点)
Q:ICL手術後に老眼になったらどうなる?
老眼とは、屈折異常(近視・遠視・乱視)とは異なり、加齢によって目のピント調節が難しくなった状態を指します。
ICL手術後に老眼になった場合、老眼鏡が必要になることがあります。
なお、「ICL手術を受けると老眼になる」といった情報を目にすることがありますが、これは誤解です。
近視の方は元々、遠くは見づらいものの近くは見えています。
ICL手術で遠くにピントが合うレンズを挿入した結果、今まで気づかなかった老眼の症状(近くの見づらさ)を感じることがあり、その結果「老眼になった」「老眼が進んだ」と感じることがあります。
Q:ICLレンズは割れることはない?
ICLのレンズは「コラマー」と呼ばれるソフトコンタクトレンズのように柔らかい素材でできており、強い衝撃を受けても、眼内で割れることはまずありません。
ただし、事故や怪我、格闘技などで強く目をぶつけた場合、稀にレンズがずれることがあります。もしもずれてしまった場合でも、眼内のレンズを元の位置に戻せば問題はありません。
Q:ICLは今後安くなることはある?
現時点では、ICL手術の費用が今後大幅に安くなる可能性は低いでしょう。
ICLのレンズは一人ひとりの患者さんの目の状態に合わせてオーダーメイドで作成する必要があり、そのための高度な設備や技術が要求されるためです。
ICLの技術進歩によって設備や材料のコストが低下したり、クリニック間の価格競争によって費用相場が少し下がる可能性は考えられますが、すぐに大幅に安くなったり、保険適用となることは期待できないでしょう。
ICLは医療費控除の対象となるため、医療費控除を申請して結果的な負担を抑えたり、ローンによって一度に支払う金額を抑えるといった工夫が現実的です。
まとめ
生体適合性と耐久性に優れたICLのレンズの寿命は半永久的といわれ、適切に挿入された場合は、基本的に交換の必要はありません。
可逆性があるため、将来的に白内障や老眼といった加齢による目の変化が起きた場合は、取り出して白内障手術も可能です。
ICL手術の手技は白内障手術に近く、ICL手術を受けるのであれば、白内障手術の実績が豊富で、高度な検査機器が整ったクリニックを選ぶといいでしょう。
東武練馬駅から徒歩1分のつつみ眼科クリニックでは、年間1,300件以上の白内障手術を手掛けている実績があります。また、高度な検査機器である『CASIA2』を導入し、ICL手術のリスク低減に努めています。
厚生労働省が認可しているスターサージカル社のICLを使い、ICL認定医が手術を担当しますので、ICLにするかお悩みの方はぜひ一度お気軽に当院までご相談ください。