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近年、乱視や近視、遠視といった屈折異常を矯正し、裸眼で見えるようにするICL（眼内コンタクトレンズ）を受ける方が増えています。
ICLでは、乱視用の「トーリックレンズ」を用いることで、乱視の矯正も可能です。
乱視用ICLを検討している方の中には、「ICLで乱視は治る？」「乱視が強くても手術は受けられる？」「レンズが回転するって本当？」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そこでこの記事では、乱視の仕組み、乱視用ICLの特徴、メリット・デメリット、手術時の注意点、費用相場までわかりやすく解説します。
ICL手術では高度な乱視も矯正可能
ICL（Implantable Collamer Lens/眼内コンタクトレンズ）では、乱視の矯正も可能です。
レーシックでは適応外となった強度乱視の場合でも、ICLであれば矯正できる可能性があります。
ICLはレーシックのように角膜を削らないため組織を温存でき、必要に応じて取り出しや修正が可能なため、近年はレーシックを受けられる目の方でも、ICLを選ぶケースもあります。
乱視とは
人の目は、水晶体がカメラのレンズのようにピントを調節することで網膜に焦点を合わせ、ものを見ています。
乱視とは、角膜や水晶体に歪みがあることで、目に入った光が網膜上で一点に集まらず、焦点が複数に分かれてしまう状態です。
軽度であれば問題はないものの、程度が大きくなると文字やものが二重に見えたり、輪郭がにじんだりする症状が現れます。
乱視には大きく「正乱視」と「不正乱視」の2種類があり、ICL手術の対象となるのは主に正乱視です。不正乱視でも一部、ICLで矯正可能な場合もあります。
| 特徴 | 主な原因 | ICLとの相性 | |
| 正乱視 | 角膜や水晶体にラグビーボール型の対称的な歪みが起こる | 生まれつきの角膜・水晶体の形状 | ICLで矯正しやすい |
| 不正乱視 | 角膜や水晶体に不規則な歪みが起こる | 円錐角膜・外傷・角膜の疾患など | ICLだけでは矯正が難しい場合がある |
ICLで乱視を矯正する仕組み
ICLでは、角膜を削ることなく虹彩と水晶体の間に小さな眼内コンタクトレンズを挿入し、乱視や近視・遠視といった屈折異常を矯正します。
目の中に入れたコンタクトレンズがピント調節を補助することで、網膜にピントが合い、見えるようになります。
角膜を削って形状を変えるレーシックとは異なり、ICLは術後に角膜の形状が変わる心配がないため、見え方の安定性が高いことも特徴です。
通常のICLと乱視用ICLの違い
通常のICLは、近視や遠視の矯正が目的です。一方、乱視がある場合は近視や遠視と同時に乱視の矯正もできる「トーリックレンズ」を使用します。
乱視では角膜に歪みが生じますが、トーリックレンズには乱視による角膜のゆがみを打ち消すために、レンズ側に特定方向のカーブが入っています。
この仕組みによって光の屈折が正しく行われ、網膜上でしっかり一点に焦点を結ぶようになる仕組みです。
乱視の度数や方向まで考慮して設計されたトーリックレンズは、固定する角度が非常に重要なため、通常のICL以上に精密さが求められます。
乱視用ICLのメリット・デメリット
ここでは、乱視用ICLの利点と注意点をわかりやすく解説します。
メリットだけでなくデメリットもしっかり理解することで、術後の満足度をより高めることにつながるでしょう。
メリット
乱視用ICLの最大のメリットは、角膜を削ることなく乱視を矯正できることです。このため見え方の質も高くなる傾向にあり、クリアで鮮明な視界が期待できます。
また、ICLには可逆性（元に戻せること）があり、必要に応じてレンズを取り出したり交換したりできるため、将来的な白内障手術の妨げにもなりません。
ICLのレンズには紫外線カット効果もあり、レーシックと比較してドライアイにもなりにくいなど、多くのメリットがある方法です。
角膜の厚みや形状に左右されにくく、レーシック適応外の方にも対応できる可能性があります。
デメリット
メリットの多いICLですが、いくつかのデメリットもあります。
乱視用ICLは通常のICLよりも構造が複雑で、レンズの位置や角度がズレると矯正効果が低下する可能性があります。そのため、医師の高い技術力と経験が重要です。
また、乱視用ICLに限った話ではありませんが、ICLではハロー・グレア（光のにじみやまぶしさ）、眼圧上昇、角膜内皮細胞の減少、感染症といった合併症が生じるリスクがあります。
ICLは保険が適用されない自由診療のため、費用が高くなる傾向にあることもデメリットでしょう。クリニックによって異なりますが、乱視がある場合、レンズが高くなるケースもあります。
乱視用ICLレンズの回転やズレについて
乱視用ICLは、乱視の軸に合わせてレンズを特定の角度で挿入することで、精密な乱視矯正を実現する治療です。
そのため、レンズの位置や角度がわずかに変わるだけでも視力の質に影響が出る可能性があります。
ここでは、回転やズレがどれほどの確率で起こり得るのか、どのような原因で生じるのか、また発生した場合の対応について解説します。
レンズが回転・ズレる確率
乱視用ICLのレンズが回転した場合でも、10度以下の軽度の回転であれば再手術が不要であることがほとんどです。
また、乱視用ICLが大幅に回転する確率は低く、海外で行われた10,258眼を対象とした大規模な研究によれば、軸の回転によって調整・交換が必要になったのは10眼で、わずか0.10%でした。
その他の研究でも0.2～0.5％程度との報告があり、交換や調整が必要になるほどの大きな回転が起こることは稀です。
レンズに回転・ズレが起こりやすくなる原因
乱視用ICLのレンズには回転を抑える機能がありますが、以下のような要因はレンズの回転やズレにつながる可能性があるため注意しましょう。
- 前房（角膜と虹彩の間）が浅いことでレンズが安定しにくい
- レンズサイズが合っていない（大きすぎる、小さすぎる）
- 手術後に目を擦る、頭部をぶつけるなどの行為
- 事故や外傷による衝撃
レンズの回転が起こるのは、手術直後〜1週間以内が多いとされています。
挿入後、ICLのレンズが安定するまでは約3ヶ月ほどかかるとされるため、定期検診をしっかり受け、医師から指示される術後の過ごし方を守ることがリスク低減につながります。
また、レンズの回転やズレの確率を下げるためには医師の技術力も重要となるため、経験豊富な医師のもとで施術を受けることが大切です。
レンズが回転・ズレてしまった場合の対処法
乱視用ICLのレンズに回転やズレが起こった場合は、再手術によって修正が可能です。
ただし、すべてのケースで再手術が必要になるわけではありません。
視力に明らかな低下が見られない程度の軽度の回転であれば、経過観察で済むことがほとんどです。
- 視力が不安定な状態が続く
- 乱視の症状が強い（文字やものや二重に見える、光がにじむなど）
- 大幅な回転が見られる
上記のようなケースでは、再手術によってレンズの位置修正もしくは交換を行うことがあります。異変を感じた際は自己判断せず、早めに医師へ相談しましょう。
乱視用ICL手術を受けるときの注意点とポイント
ここでは、乱視用ICL手術を受けるときの注意点やポイントを紹介します。
コンタクトレンズ中止期間を厳守する
ICLの検査前には、一定期間コンタクトレンズの使用を中止する必要があります。
これは、コンタクト装用によって角膜形状が一時的に変化し、正確な検査結果を得られなくなる可能性があるためです。
誤ったデータのままレンズを決定すると、適切な視力が得られない可能性があるため、必ずコンタクトレンズ中止期間を守りましょう。
コンタクトレンズの使用中止期間は、以下のとおりです。
- ソフトコンタクトレンズ……検査前3日間
- 乱視入りソフトコンタクトレンズ……検査前1週間
- ハードコンタクトレンズ…… 検査前2週間
手術前の詳しい検査が欠かせない
乱視は度数が不安定になりやすく、全身の体調、目の疲労、目の乾燥状態などによって度数が変化することがあります。
正確な検査結果を得るためにいくつかの詳しい検査を受ける必要があり、必要に応じて再検査が必要になることがあります。
また、既往歴や目の状態に不安がある場合は必ず相談しておきましょう。
医師の経験と技術力が重視される
乱視用ICL手術では、切開の向きやレンズを入れる方向を工夫することで乱視を軽減することができます。
例えば「強主経線切開（乱視のカーブが強い方向から切開する方法）」や「乱視矯正角膜輪部切開（LRI/角膜の一部をわずかに切って乱視を減らす方法）」などの手法です。
これらは高度な技術を要するため、ICLだけでなく白内障手術にも習熟した経験豊富な医師による手術を受けることが望ましいでしょう。
実績豊富な医師であれば、術中の細かな調整や患者さん一人ひとりの目に合わせた判断ができ、治療の満足度向上につながります。
クリニック選びの際には、医師の経歴や症例数などをHPで確認しましょう。
乱視用ICLの費用相場
ICLは自由診療のため、費用はクリニックごとに異なります。
乱視用ICLのレンズは通常のICLよりもレンズ設計が複雑で、通常のICLよりも10万円前後費用が高くなることが多いようです。
通常のICLの費用相場は両目で50万円〜70万円ほどが目安なので、乱視用レンズの場合は＋10万円ほどと考えておくといいでしょう。
つつみ眼科クリニックでは、乱視の有無に関わらず、ICL手術費用は60万円（両目）となっています。
乱視用ICLについてのよくある質問
ここでは、乱視用ICLについてのよくある質問を紹介します。
Q：近視と乱視がある場合はレンズに乱視を入れる？入れない？
ICLのレンズに乱視を入れるかどうか迷っている場合、現在使っているメガネやコンタクトレンズに近視と乱視の両方が入っているのであれば、乱視用のトーリックレンズを使う方が適しているでしょう。
近視と乱視の両方がある方が、近視だけを矯正すると、乱視が残って視界がぼやける可能性があるためです。
ただし、乱視の程度によっては通常のレンズでも問題ない場合もあります。
軽度の乱視であれば、ICL挿入のための切開時に、「強主経線切開（乱視のカーブが強い方向から切開する方法）」を行うことで、本来の乱視を軽減できることがあります。
強主経線切開は医師の技術力が求められる手法のため、ICL手術や白内障手術に精通した医師が在籍するクリニックで相談しましょう。
Q：強い乱視でもICLで矯正できる？
ICLは適応範囲が幅広く、度数の強い近視や乱視の矯正に対応しています。
適応はクリニックによっても異なりますが、一般的には6.0D（ディオプター）程度までICLで対応可能です。
6.0Dを超える強度乱視の場合、ICLの設計上、安定した矯正が難しく、乱視が残ってしまう可能性があるため、多くの医療機関で6.0Dを目安に上限が設定されています。
強度近視の場合、ICLだけでなく他の矯正法との併用を検討することも多いです。
なお、ICLで矯正できるのは主に「正乱視」です。「不正乱視」はICL手術が適応になるケースもありますが、一部の症例に限られます。
自分の乱視がICL手術に適しているかどうか、まずは眼科専門医に相談してみましょう。
Q：ICL手術後に乱視が残ることはある？
手術前の乱視軸や乱視度数の測定に誤差があると、ICL手術後に乱視が残ることがあります。
また、稀ではありますが、術後にレンズのズレや回転が起こると乱視が残るケースもあり、このような場合は再手術による調整が必要と判断されることがあります。
Q：将来白内障になったらどうする？
ICLは可逆性があるため、将来白内障など目の病気になった場合でも、レンズを取り出して通常の白内障手術を受けることが可能です。
乱視がある方の場合、乱視矯正の機能のついているレンズを使って白内障手術を行います。
まとめ
乱視用ICLは、角膜を削ることなく乱視を矯正できる視力矯正手術です。
適応範囲が幅広く、レーシックでは難しかった角膜が薄い方、強度の乱視や近視の方も治療が受けられることや、見え方の質や安全性が高いことなど、多くのメリットがあります。
交換が必要になるほど大きくレンズが回転するケースは稀ではあるものの、リスクを抑えて満足度の高い治療にするためには、高い技術と豊富な実績を有する医師による手術を受けることが大切です。
東武練馬駅から徒歩1分のつつみ眼科クリニックでは、高度な設備を整え、難症例にも対応できる医師と熟練したスタッフで診断・治療にあたっています。
ICL手術は、白内障手術についても高い技術を持つICL認定医が担当しますので、ICLによる乱視矯正をご検討中の方はぜひお気軽にご相談ください。