
緑内障だと診断された、もしくは疑いがある方の多くは、将来の見え方や生活への影響に不安を抱えているかもしれません。
緑内障は視神経が少しずつ傷む病気で、気づかないうちに進行することもあります。
現時点で失われた視野を元に戻す治療は限られるものの、眼圧をコントロールして進行を抑えることで、日常生活を守れる可能性が高まります。
症状の有無にかかわらず、定期的な検査と治療の継続が大切です。自己判断で点眼を中断すると悪化につながる場合があるため、違和感や不安・疑問があるときは医師に相談しましょう。
この記事では、緑内障は治るのか、原因と進み方、眼科での治療の選択肢、そして無理なく続けやすいセルフケアを分かりやすく解説します。
緑内障は治るのか?

緑内障と聞くと、治る病気なのか、視野は戻るのかと気になる方も多いのではないでしょうか。
緑内障は早い段階で正しい理解を持つと、落ち着いて治療に前向きに取り組みやすくなります。治療では、完治と進行抑制を区別して捉えることが大切だといえるでしょう。
ここでは、緑内障は治るのかという疑問と、最初に知っておきたい基礎知識を紹介します。
緑内障は基本的に治らない
緑内障は、現時点の医療で『完治』を期待するのが難しい病気とされています。
とはいえ、将来必ず見えなくなるという意味ではありません。多くのケースでは、早い段階から経過を丁寧に追い、必要な治療を続けることで、見え方を保ちながら生活できる可能性が高まります。
長く付き合う慢性疾患として捉えると、気持ちの整理もしやすくなるはずです。過度に怖がりすぎず、できる対策に目を向けることが大切でしょう。
視界が元に戻りにくい理由
緑内障で視界が元に戻りにくいのは、視野をつかさどる視神経の細胞が少しずつ傷み、減っていく病気だからです。
緑内障では、網膜の神経節細胞や神経線維が変性・脱落し、その結果として視野障害が進行していきます。
いったん失われた細胞や線維は自然に再生しにくく、現在の治療でも欠けた視野を回復させるのは難しいのが現実です。
治療を受けても、元の見え方に戻るというより、これ以上視野の欠けを広げないことを目指す病気として理解しておきましょう。
治療の目的は進行を止める・遅らせること
緑内障治療の目的は、視野の変化がこれ以上進まないように抑えることです。
その中心になるのが眼圧を下げる治療で、眼圧を十分に下げられれば進行を防いだり遅らせたりできる可能性があるとされています。
眼圧が高くないタイプでも、さらに眼圧を下げることで進行がゆるやかになる場合があります。
どの程度下げるかは病型や進行度、生活への影響を踏まえて医師が目標を設定し、点眼を基本にレーザーや手術を組み合わせて調整するのが一般的です。
定期検査を必ず受け、眼圧や視野を確認しながら、治療の方針を見直していきましょう。
早期発見で視力を守れる
緑内障は自覚症状が出にくく、気づかないうちに視野欠損が進むことも多い病気です。
ところが、早期の段階で見つけて治療を開始すれば、眼圧の目標設定や治療法の選択肢を取りやすく、視野の悪化速度を遅らせられる可能性が高まるとされています。
日本眼科医会の解説でも、早期に見つけて治療を継続することが、視機能を保ちながら生活するうえで重要としていて、早めの受診が将来の見え方を守るポイントといえるでしょう。
40歳以降は、定期健診で眼底検査や視野検査を受け、家族歴や強い近視がある方は特に注意しておくと安心です。
緑内障の原因と進み方

緑内障はゆっくり進むことが多く、気づかないうちに視野が欠けていく場合があります。
眼圧が高くないタイプも多く、症状の有無だけでは分かりにくいため、検査が欠かせません。
原因と進行の仕組みを知れば、早期発見と治療継続の意味が見えやすくなるでしょう。ここでは、緑内障の原因と進み方を紹介します。
緑内障は視神経が少しずつ傷む病気
緑内障は、目で受け取った情報を脳へ送る視神経の通り道に障害が起こり、視野に欠けが生じる病気です。
実際には網膜にある網膜神経節細胞が徐々に減ることで視神経が細くなり、見える範囲に特徴的な欠け方が現れます。
進行はゆっくりなことが多く、早い段階では本人が気づきにくいケースも少なくありません。
また、左右で進み方に差が出ることもあるため、受診時には両眼を含めて状態を確かめていきます。
見えない部分は周辺からゆっくり広がり、中心の視力は比較的保たれやすい点も、緑内障の特徴だといえるでしょう。
眼圧が高くないタイプが多い
緑内障は眼圧が高い人に起こる病気と思われがちですが、日本では眼圧が正常範囲でも発症する『正常眼圧緑内障』が多いとされています。
つまり、測定値が低めでも緑内障が隠れていることがあり、眼圧だけで安心するのは危険です。
その背景には、視神経の弱さや近視、眼の血流の影響などが関わっている可能性があります。
数値は大事な手がかりのひとつであるため、視野検査やOCT(光干渉断層計:画像検査)の所見と合わせて総合的に確認し、定期的に経過を追うことが大切です。
自覚症状が出にくい理由
緑内障の初期に自覚症状が出にくいのは、視野の欠けが周辺部から静かに始まることが多く、中心の視力は長く保たれやすいからです。
さらに、欠けた部分は両目で見ているともう片方の目が補い、脳も見えない場所を自然に埋め合わせるため、本人は「普通に見えている」と感じやすいとされています。
多くのタイプでは、痛みや充血などのはっきりした症状も目立ちません。視力検査だけでは異常が分かりにくい点もあり、気づかないまま進行することも多いでしょう。
放置するとどうなる?
緑内障は進行性の病気です。放置すると、気づかないうちに視野の欠けが少しずつ広がり、見える範囲が狭くなっていきます。
病状が進むにつれて、段差や物にぶつかりやすい、車や自転車で周囲の動きに気づきにくいなど、日常の安全や行動に影響が出ることがあります。
急性の発作では、急激に眼圧が上昇することで目の痛みだけでなく頭痛や吐き気、視力低下などの症状が現れ、緊急の治療が必要になることも。
末期の症状をさらに放置すると、失明する恐れもあるため注意が必要です。
視力が保たれている間は自覚しにくいからこそ、疑いを指摘された段階で検査と治療に取り組むようにしましょう。
進行を遅らせるために眼科で行う治療

緑内障の治療は、眼圧を下げて視神経への負担を減らし、視野の悪化をできるだけ抑えることが基本です。
点眼を中心に、必要に応じてレーザーや手術を組み合わせ、病型や進行度に合わせて治療方針を調整していきます。
ここでは、緑内障の進行を遅らせるために眼科で行う治療を紹介します。
点眼治療
緑内障治療の基本は点眼薬で眼圧を下げ、視神経への負担を減らすことです。
点眼薬には房水(角膜と水晶体の間を満たす透明な液体)の産生を抑えるタイプや、排出を促すタイプ、眼圧を抑えるタイプなど複数の作用があり、病型や進行度、眼圧の値に合わせて選ばれます。
1種類で十分な効果が得にくい場合は、作用の異なる薬を組み合わせたり配合剤に切り替えたりして調整するのが一般的です。
点眼は1回1滴が目安で、複数使うときは間隔を空けると効果が安定しやすいとされています。
違和感や副作用が出た場合は、自己判断で中止せず、受診時に伝えることが大切です。
決められた回数や量を守りながら長期的に続けることで、眼圧を保ち進行を抑える土台になります。
レーザー治療
レーザー治療は、点眼だけでは眼圧が十分に下がりにくい場合や、点眼が負担になる場合に検討される方法です。
代表的なものにSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)があり、線維柱帯にレーザーを当てて房水の流れを改善し、眼圧低下を目指します。
外来で点眼麻酔のうえ短時間で行われ、痛みがほとんどなく、副作用も比較的少ないのが特徴です。
術後の生活制限はほとんどないといわれますが、効果の出方や持続には個人差があるため、必要に応じて他の治療と組み合わせていきます。
また、緑内障のタイプによっては適応外となる点に注意が必要です。
手術
手術は、点眼やレーザーでも眼圧が目標まで下がらず、視野の欠けが広がり続ける場合に検討される治療です。
以下は、眼科で行われる代表的な緑内障手術です。
- 線維柱帯切開術(トレベクロトミー):房水の出口を広げたり開通させたりする手術
- 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー):角膜の下に新しい排出路を作る濾過手術
- チューブシャント手術:チューブで房水を逃す手術
房水の出口を作る低侵襲な流出路再建術や、結膜の下に新しい排出路を作る濾過手術、チューブで房水を逃す緑内障インプラント手術などがあり、病型や進行度に合わせて選択されます。
目的は眼圧をしっかり下げて進行を抑えることで、手術を受けても視野が回復したり完治したりするわけではありません。
合併症や術後管理の注意点もあるため、メリットとリスクを医師と確認しながら慎重に決めていきます。
治療を続けるためのポイント
緑内障は自覚症状が乏しいまま進むことが多く、治療の効果を自分で判断しにくい病気です。
だからこそ、治療を続けるのが難しいと感じる場合も多いですが、以下の点を意識して治療を続けましょう。
- 点眼は指示どおり毎日続ける
- 検査で眼圧と視野を定期確認する
- 副作用や生活上の困りごとは早めに伝える
点眼を続ける中で、「いつもと違うな」「副作用かな」と感じることがあっても、自己判断で止めず、小さな変化も受診時に相談することが大切です。
眼圧の変化に合わせて治療内容は調整されるため、通院を抜かさないようにしましょう。
緑内障の進行をゆるやかにするセルフケア

緑内障は治療だけでなく、毎日の過ごし方によっても眼の状態が左右される場合があります。
生活習慣を整えることは不安の軽減にも役立ちます。点眼と通院をきちんと続けたうえで、眼圧が上がりやすい動作の回避、軽い運動、食生活、睡眠の整え方を見直しましょう。
ここでは、進行をゆるやかにするセルフケアを紹介します。
点眼と通院を習慣にする
点眼と通院を習慣にするためには、毎日の生活の流れに組み込む工夫が役立ちます。
例えば、朝夕の歯みがきや食後など、必ず行う行動の直後に点眼するよう決めておくと、忘れにくくなります。
スマホのアラームや服薬管理アプリを使うのも一つの方法です。
複数の点眼がある場合は5分ほど間隔を空け、1回1滴を守ると薬が流れ出にくいとされています。
点眼後は目を軽く閉じるか、目頭をそっと押さえると全身への流れ込みを減らしやすいでしょう。
通院については、次回予約をその場で確認して手帳やカレンダーに入れ、検査結果を一緒に振り返ることを心がけると続けやすくなります。
体調や予定で点眼が難しい状況が続くときは、無理に我慢せず受診時に相談してください。
眼圧が上がりやすい動作を避ける
眼圧は日常の動作や姿勢で一時的に上がることがあり、緑内障のある方ではその変動が負担になる可能性があります。
例えば、長時間のうつむき姿勢や、力んで息を止める動作、重い物を持ち上げる場面などは眼圧が上がりやすいので注意が必要です。
ヨガや筋トレでも、逆立ちに近い姿勢や強く息をこらえるのは控えめにし、無理のない範囲で行いましょう。
こうした影響の程度には個人差があるため、生活で不安な動作があれば受診時に相談して調整していくことが大切です。
軽い有酸素運動を続ける
軽い有酸素運動は、眼の血流を保ちやすくし、眼圧も一時的に下がる可能性があるとされています。
また、ストレスの軽減にも役立つと考えられます。ウォーキングやゆっくりしたジョギングなど、会話できる程度の強さを週に数回、20〜30分を目安に続けるとよいでしょう。
運動をやめると眼圧が戻りやすくなる可能性もあるため、無理なく長く続けることが大切です。
息をこらえる動きのある激しい筋トレは控え、持病がある場合は事前に医師へ相談してください。
食生活を整える
食生活を整えることは、緑内障の進行リスクを下げる助けになる可能性があります。
特に緑黄色野菜や葉物野菜には、眼の血流や房水の流れに関わる一酸化窒素の材料となる硝酸塩が含まれ、摂取量が多い人ほど発症や進行が少ない傾向を示したという報告もあります。
まずは野菜や魚、良質なたんぱく質を意識し、塩分や脂質に偏らない食事を心がけましょう。
喫煙は血流に悪影響を与える可能性があるため控えるのが望ましいとされます。カフェインや飲酒は過度にならない範囲で、体調に合わせて調整すると安心です。
睡眠とストレス管理を怠らない
睡眠不足や強いストレスが続くと、血流や自律神経のバランスが乱れ、眼の状態にも影響する可能性があります。
夜更かしや不規則な生活は避け、毎日なるべく同じ時間に眠る習慣を意識しましょう。
いびきが大きい、日中の強い眠気がある場合は睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあり、視神経への負担と関連する可能性が指摘されています。
気分転換や軽い運動でストレスを溜めにくくし、血圧などの持病がある方は主治医と連携しながら整えることが大切です。
まとめ
緑内障は一度欠けた視野を回復させる治療は現時点で確立されていませんが、眼圧を下げる治療とセルフケアで進行を抑えられる可能性があります。
自覚しにくい病気だからこそ、早めの検査と継続管理を怠らないようにしましょう。
東武練馬駅南口から徒歩1分のつつみ眼科クリニックは、緑内障専門医が3名在籍しています。
点眼、SLTレーザー、手術の中から患者様の目の状態に応じた適切な治療法をご提案し、納得いただけるまで丁寧に説明します。
緑内障の進行が不安な方や、症状や治療に関して疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。