
「視界がにじむ」「文字が二重に見える」「光がまぶしく感じる」
このような症状を感じているなら、乱視が原因かもしれません。
乱視は誰にでも起こる可能性があり、悩んでいる方の多い症状ですが、実際にどのような仕組みで視界がぼやけたり二重に見えたりするのかわからない方も多いでしょう。
この記事では、乱視の仕組みや種類、症状、セルフチェック、矯正方法などについてわかりやすく解説します。
見え方の変化が気になっている方、目の疲れや頭痛を感じることが増えた方はぜひ記事をチェックして適切な対処につなげてみてください。
乱視とは?

乱視とは、角膜や水晶体の歪みによって、ものを見るときにどの距離でもピントが合わなくなってしまう状態です。
通常は、網膜上に一つの焦点ができることで、正しく見えます。(正視)
乱視の場合は焦点が複数に分散されてしまい、文字や物体がにじんだり、二重に見えたりすることが特徴です。
実は、ほとんどの人は乱視を持っており、乱視が全くない目の方が珍しいといわれています。軽い乱視であれば日常生活で困ることも少なく、矯正の必要がない場合もあります。
一方、視力矯正が必要な乱視(片眼0.75D以上)の有病率は47.4%との海外の報告もあり、治療が必要なケースも少なくありません。
しかし、乱視は自覚症状が曖昧で、近視や老眼と比較すると見過ごされやすい傾向にあります。
乱視が仕事や生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす可能性があるため、自分の目の状態を詳しく調べ、症状に合った治療を受けることが大切です。
(出典:Prevalence of astigmatism in relation to soft contact lens fitting)
乱視に気づきづらい理由
乱視では、「にじみ」「ぼやけ」など見え方が変化します。
しかし、人間の脳には順応力があるため、気づかないうちに「乱視の見え方=普通の状態」のように変化に慣れてしまうのです。
「慣れているなら問題ないのでは?」と思うかもしれませんが、実際には仕事や勉強、日常生活などさまざまな生活の質を下げてしまっていることが多くあります。
例えば、スポーツをしている人はボールが二重に見え、距離感やタイミングが狂ってしまうことがあるでしょう。
仕事や勉強でも、文字がにじんで見えることで長時間の作業で目の疲れや頭痛の増加につながります。車を運転する仕事であれば、夜間に光がぼやけることで安全面のリスクも抱えることになります。
「おかしいな?」と思ったら放置せず、早めに眼科で検査を受けてみましょう。
近視・遠視・老眼との仕組み・見え方の違い

目に入った光が網膜上で正確にピントを結ばず、物がぼやけて見える状態の総称を「屈折異常」といい、乱視のほか、近視と遠視が含まれます。
一方、老眼(老視)は屈折異常とは異なり、自然な老化現象の一つです。加齢によって目のピント調節機能(毛様体筋の衰えや水晶体の硬化)が衰えることで起こります。
それぞれの仕組み・主な見え方を表で見てみましょう。
| 種類 | 仕組み | 主な見え方 |
| 近視 | 光が網膜より手前で焦点を結ぶ | 遠くがぼやける |
| 遠視 | 光が網膜より後ろで焦点を結ぶ | 遠くも近くもぼやける |
| 老眼 | 調節力の低下で焦点を合わせづらい | 近くが見えづらい |
| 乱視 | 光が一点に集まらず複数の焦点ができる | 二重に見える・ぼやけ・にじみ |
「老眼だと思ったら、乱視だった」というケースもあるため、老眼がひどくなった、メガネやコンタクトレンズを使っているが見えづらいといった場合は、一度眼科で相談してみましょう。
乱視の種類┃主な症状・見え方

乱視には大きく、生まれつきなどで角膜や水晶体の歪みが原因で起こる「正乱視」と、病気や怪我によって起こる「不正乱視」があります。
ここでは、それぞれの特徴や見え方などについて解説します。
正乱視
正乱視とは、角膜や水晶体がラグビーボールのように歪んでいることで起こる乱視です。
角膜や水晶体が丸く整っていれば光は網膜上の1点に集まりますが、ラグビーボールのように楕円形だと屈折が変わり、焦点が1点に集まりません。
正乱視は歪みの角度によって、直乱視・倒乱視・斜乱視の3つに分けられ、それぞれ見え方に違いがあります。
正乱視の場合、メガネやコンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)で矯正が可能です。
直乱視
直乱視は、角膜や水晶体の縦方向の湾曲が強いタイプの乱視です。
上下が押し潰され横向きに置いたラグビーボールのような形に歪みが起きており、正乱視のおよそ90%がこの直乱視といわれています。
直乱視では、縦方向の線は見やすいものの、横方向の線は見えづらいことが特徴です。
倒乱視
倒乱視は、角膜の横方向の湾曲が強い乱視です。
左右から押し潰されたことで縦長の形に歪んでおり、直乱視と反対で、横方向の線は見えやすく、縦方向が見えづらくなります。
倒乱視は、高齢者の方に多いといわれています。これは、歪みの方向が加齢によって変わる傾向があるためです。
40歳未満では直乱視が多いものの、40歳以上になると徐々に少なくなり、反対に倒乱視の方が増えてきます。
歪みの方向が変わると見え方も変わるため、過去に乱視用のメガネを作った場合でも、作り直しが必要です。
このような乱視の目の変化は自分では気付かないことも多いため、すでに乱視矯正を受けたことのある人も、必要に応じて見直しを行いましょう。
斜乱視
斜乱視は、角膜の歪みが斜め方向に生じるタイプです。
斜めの線は見えやすいものの、その線と直角に交わる線は見づらくなります。また、ものが二重に見えることも多いです。
不正乱視
不正乱視(角膜不正乱視・水晶体不正乱視)とは、角膜の炎症や傷、円錐角膜、角膜混濁などにより角膜や水晶体に不規則な歪みが起こることで、正しく焦点が合わない状態の乱視です。
正乱視とは異なり、光が複雑に散乱するため、程度の強い不正乱視では何重にもブレて見えます。
不正乱視の場合、メガネでの矯正はできず、ハードコンタクトレンズで矯正するか、手術が検討されるケースもあります。
ただし、角膜の凹凸に合わせて作る特殊な乱視用メガネを用いることで、メガネでの不正乱視矯正ができることもあります。
乱視の原因・悪化する理由

乱視の原因は複雑で、加齢による変化や病気・怪我の影響のほか、遺伝が関与しているのではないかとも言われていますが、詳しいメカニズムはまだ明らかになっていない部分も多くあります。
海外の一部の研究では、両親に乱視がある場合、子どもの乱視発症リスクが高まるという結果が出ました。
また、両親の乱視の程度が強いほど、子どもの乱視のリスクが高まるとも報告されています。
乱視が悪化する原因
メガネやコンタクトレンズなどで矯正せず放置すると、乱視が悪化する可能性があります。
特に子どもの場合、乱視を放置すると視力の発達が妨げられ、将来的に弱視(視力が正常に発達せず、メガネなどで矯正しても視力が十分に出ない状態)となる可能性があるため、注意が必要です。
また、逆さまつ毛による角膜への刺激や傷も、乱視につながることがあります。
目を守るためにも、異常がある場合は放置せず適切な治療を受けましょう。
なお、乱視が急激に悪化した場合、白内障や円錐角膜などの疾患が背景となっている可能性があるため、早めに眼科を受診してください。
乱視のセルフチェック方法

乱視のセルフチェック方法として代表的なのが、放射線状の画像を使ったチェックです。
中心から伸びる線を見たとき、特定の方向だけ濃く見えたり、逆にぼやけたりする場合は乱視が疑われます。
また、以下のような症状がある場合は、乱視のサインかもしれません。
- 細かい文字を読む際に二重に見える、ぼやけて見える
- 夜間のライトを見た際に光がにじむ
- 目が疲れやすい
セルフチェックだけでは正確な診断はできないため、見え方に不安がある場合は眼科での詳細な検査を受けましょう。
乱視の矯正方法(治療法)

程度の違いはあるものの、ほとんどの人が乱視を持っています。軽い乱視で、生活に支障がなければ矯正が必要ない場合もあります。
しかし、乱視で見づらさを感じている場合は眼精疲労や視力低下を引き起こすこともあるため、眼科での検査や治療を受けましょう。
ここでは、乱視の矯正方法(治療法)を紹介します。
乱視用メガネ
乱視の矯正では、2つの焦点を合わせられる円柱レンズを使用し、ものがブレてみえないように補正します。
メガネは目に触れないため衛生的で、子どもから大人まで手軽に視力矯正ができる点がメリットです。
ただし、強い乱視の場合には慣れるまでに違和感が生じることがあることや、スポーツの時は不便さを感じることがあるでしょう。
乱視用コンタクトレンズ
乱視用コンタクトレンズ(ソフトコンタクトレンズ・ハードコンタクトレンズ)は、角膜上に直接レンズを載せることで屈折異常を矯正する方法です。
乱視の場合、通常のレンズでは矯正が不十分なため、乱視専用のトーリックレンズを使用します。
コンタクトは視界が広く、スポーツ時にも便利なため多くの人に選ばれていますが、合わないと見づらさが残ったり、乾燥や異物感を引き起こす可能性もあります。
ソフトコンタクトレンズ
ソフトコンタクトレンズは、主に正乱視の矯正に使われます。
乱視の軸や度数に合わせて設計されており、目の上でレンズがズレにくくなっていることが特徴です。
正乱視の矯正に用いられ、フィッティングが重要なため眼科医としっかり相談しましょう。
ハードコンタクトレンズ
ハードコンタクトレンズは、主に不正乱視の矯正に用いられるハードコンタクトレンズです。程度の強い正乱視でも用いられることがあります。
ソフトレンズよりも乱視矯正力が高く、角膜上で変形が起こりにくいため視力も安定しやすい傾向にあります。
ただし慣れるまでは異物感を感じやすく、定期的なメンテナンスも必要です。
手術
メガネやコンタクトレンズでの矯正ができないときは、目の状態や希望に合わせてICL(眼内コンタクトレンズ)やレーシックといった手術、白内障手術を検討する場合もあります。
レーシックが受けられない強い近視や乱視の場合でも、ICLでは手術可能なことがあります。
いずれも見え方の改善が期待できますが、すべての人に適しているわけではなく、費用や手術のリスクもあるため、眼科医と相談のうえ慎重に検討しましょう。
【Q&A】乱視についてのよくある質問

ここでは、患者さんからよくいただくことの多い質問と回答を紹介します。
Q:乱視と近視が同時に起こることもある?
「乱視と近視(近視性乱視)」、または「乱視と遠視(遠視正乱視)」は同時に起こることも少なくありません。日本人の場合、近視性乱視が多い傾向にあります。
乱視と近視の両方がある場合、2種類のレンズを1枚に組み込み、一度に装用できるようにして治療します。
ただし、必ずしも乱視と近視の両方治療しなければいけないわけではなく、どちらか一方のみの治療でいいケースもあります。
Q:乱視の矯正は何歳から始めるべき?
子どもの乱視は、早い段階で適切な治療を受ければ、視力発達への悪影響を抑えられます。
乳幼児期〜学童期は視力が発達する大切な時期であり、強い乱視を放置すると弱視の原因になるため、違和感を感じたらすぐに矯正を始めましょう。
大人の場合も、気付いた時点で放置せず、矯正が必要かどうか検査を受けることが大切です。
Q:ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズはどっちがいい?
乱視が強い方には、ハードコンタクトレンズが向いています。ただし、最初はゴロゴロする違和感が気になる点がデメリットです。
ご希望であれば、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの両方を試すこともできますので、実際に使用感を確かめてみるのもおすすめです。
Q:コンタクトレンズを装用しても見えにくさや目の疲れが治らないときは?
コンタクトレンズを装用しても見え方が不安定、目が疲れるといった場合は、コンタクトレンズが合っていない可能性があります。
つつみ眼科では、乱視の強い方や従来のコンタクトレンズでトラブルの多い方に「オーダーメイドコンタクトレンズ」をおすすめしています。
まとめ
乱視は、角膜や水晶体の形状の歪みによってピントが合わなくなり、ものがブレたりぼやけたりする屈折異常です。
軽度であれば問題ないこともありますが、見えづらさや眼精疲労など気になる症状がある場合は、眼科で検査を受けて適切な治療を受けましょう。
メガネやコンタクトレンズなど、自分に適した方法で矯正すれば日常生活での見え方が大きく改善する可能性もあります。ぜひ一度眼科で相談してみましょう。
つつみ眼科クリニックでは、患者様一人ひとりの目の状態やライフスタイルに合わせ、適した矯正方法をご提案しています。
オーダーメイドコンタクトレンズも取り扱っていますので、「乱視かもしれない」「メガネやコンタクトレンズをしているが、見えづらい」など、目のお悩みがある方は一度お気軽にご相談ください。